わが愛機 Vol.4 Canon EOS 5Dとプロ定番ズームレンズの購入使用リポート
Canon EF24-70mm
f/2.8L USM
Canon EF70-200mm f/2.8L IS USM
2005年の4月に、CanonさんとNikonさんのそれぞれのショウルームで
EOS-1Ds Mark2(イオス ワンディーエス・マーク ツー)とNikon D2Xをお借りして、現場で撮らせて頂いたサンプル写真を掲載したが、丸一年経って、ぼく自身が2006年に買うデジタル一眼レフをどれにするかについて、ついに結論を出す時がやってきました。
個人的には、カメラ好きな人には、それぞれの好みや考え方にこだわりがあり、自分が好きな使いやすいカメラを選べば良いと思っています。
カメラを仕事で使うとなれば、機材選びにはシビアにならざるを得ません。決して安いものではないからです。
これから先も、コマーシャルフォトとか写真取材の仕事を続けたいと考えておられる方は、やはり、デジタルカメラで撮った写真を最新のパワーのあるパソコンを使って画像処理のスキルを磨くことと、銀塩に固執せず、デジタル撮影も抵抗感なく自在にこなせる「今風のプロ」として、デジタル時代に相応しい機材の装備が必要になってくると思います。
最新のパワーのあるパソコンと言ったのは、2000万〜4000万画素クラスのファイル容量が大きい画像処理を連続してテキパキと行えるグラフィック能力がある機種・・・例えば、64ビットCPUを複数搭載したワークステーション(MacProなど)などを指します。デジタルカメラの画像ファイルを保存する内蔵ハードディスクは、最低でも容量が1テラバイト(1000ギガバイト)ぐらいのものが必要です。外付けのハードディスクは2テラバイトが必要になるでしょう。
コダックさんや富士フイルムさんが、映画や写真のデジタル化が進んで、フィルムの生産を減産している厳しい世の中にあって、デジタル嫌いの銀塩写真至上主義を唱える写真家もいますが、21世紀に於いて、19世紀半ばにダゲールが発明した銀板写真の写真技術で生活していける人はいないと思います。職業写真家のわれわれは、自分を取り巻く進んだ科学技術を享受すればいいのです。
昨今における「プロとして相応しい機材」とは、カメラ・レンズに留まらず、画像処理用の複数のパソコンやソフトウェア、そして写真画質のプリンターも、カメラ性能に合ったものをバランスよく装備しなければならないので、ゼロからのスタートなら、小型乗用車を買うぐらいの予算を見積もっておく必要がありますね。しかし、零細な画像処理のプロの現場では、ファミリーユースのチープなデジタルカメラが活躍していて、型遅れのパソコンで画像処理しているのが実情です。
一点豪華主義で、カメラだけがいくら性能が良くても、ただ写すだけの装備だけでは、自分のイメージにあった写真をものにすることは難しいでしょうね。
こういうことを考えると、今の写真のカメラマンって、写真の急速なデジタル化によって、SOHOの事業規模では、年々儲かるビジネスではなくなってきたような気がします。
デジタルカメラやパソコン、ソフトウェアや周辺機器の賞味期限は6年ほどしかない・・・5年も経つと性能が陳腐化し、古くなった機材で仕事していると、時代のニーズを後方から追い掛ける状況になってしまい、商機のチャンスを逃してしまいます。
ということで、2006年3月に、Canonさんの35ミリ判フルサイズ・デジタル一眼レフの二機種・EOS-1DsMark2(イメージセンサの画素数は1670万画素)とEOS
5D(イオス ファイブ ディー:1271万画素)を買うことにしました。個人的には、写真がA3ノビまで伸びたら充分です。
FUJI FinePix S2ProとFUJI FinePix S3Proを仕事に使っていた時は、画像処理にはPowerMac
G4のパワーとMac OS9.2で充分だったのですが、EOS DIGITALの画像処理用に、PowerMacG5
2GHz DualとCinema HD Display23型を同時に買いました。Adobe PhotoshopとAdobe
IllustratorもCS2にバージョンアップしました。2006年に新品で買ったCinema HD Display23型の寿命が意外と短く、3年しか持たず、現在はナナオ製の液晶ディスプレーに換えています。
EOS DIGITALにした理由は、2006年時点で、NikonさんやFUJIさんから35ミリ判フルサイズのデジタル一眼レフを発売するのを何時までも辛抱強く待っておられないからです。(この記事の初稿を書いた後の2008年12月に、Nikonさんから35mm判のフルサイズデジタル、FXフォーマットのNikon
D3xが販売されました。因みに2013年12月では、NikonD4, NikonDf, NikonD800, NikonD610の4機種が
FXフォーマットで、Nikonさんは、巻き返しに本気になっています。)
なお、デジカメで撮った写真をパソコン無しでプリンターに繋いで、ハガキ大やサービス判で出力するような方は、35ミリ判フルサイズのEOS5DやEOS-1Ds
Mark2のような高級機や画像処理パソコンのPowerMacG5(2013年現在は、MacProというワークステーション)は必要ないと思います。ホビーユース、ファミリーユースのEOS
DIGITALで十分でしょう。
EOS DIGITALを買ってしばらくの内は、EOS5D(以下5Dと記述)の方は、EOS-1Ds
MarkII(以下1Ds Mark2と記述)のサブ機という扱いにしていましたが、とんでもない。ぼくの昨今の仕事でもある、写真取材のメインカメラは、5Dの方なのです。カメラの初期設定やピクチャースタイル設定などの操作は、EOS5Dの方がプログラムのディレクトリがシンプルになっていて、ぼくのような中高年者にも憶えやすく、カメラの使い勝手は1Ds
mark2よりも5Dの方が優れていると思いました。
それに5Dのボディは、フルサイズ機としては810g(電池なし)で軽い。専用電池のBP-511A(EOS5Dmark2と互換性なし)も小さくて軽いです。コンビニで入手できる単三アルカリ電池(6本)が使えるオプションのバッテリーグリップを付ければ嵩張って重くなります。バッテリーグリップには縦位置撮影用のシャッターボタンとメイン電子ダイアルも付いているので、縦位置で撮影することが多いカメラマンには利用価値はあるでしょうが、通常はコンパクトな5Dの長所を生かしたほうが賢明だと思います。
従って、手持ち撮影の写真取材の時は5Dをメインに愛用しております。つまり、5Dと1Ds
mark2の両機を単純に価格面だけで比較してメインとかサブ機と決めつけるのは適切ではないということが使ってみてから判ってきたのです。キャノンさんは5Dを、ハイアマチュア用カメラに位置づけておられますが、5Dもプロ機として、十分な戦力になるカメラだと認識させられました。
EOS-1Ds mark2は、営業写真館やコマーシャルフォトのスタジオ撮影用に開発されたカメラなので、ちょっと大層すぎて、気軽に写真を撮りたくなるようなカメラではないです。
EOS-1D系を持つと「今から撮るぞ!」という気合いが要りますね。
しかし、5Dと1Ds Mark2を比較してみますと、1Ds Mark2の方は、画像処理用とAF駆動用に別々のCPUを搭載し、45点AFセンサを搭載した1DsMark2のAF合焦スピード(AFエリア自動選択モード)は、9点AFエリア自動選択時の5Dよりも素早く感じられ、望遠レンズを使う時のAF撮影では、1DsMark2のアドバンテージは、かなり高くなります。また、シャッターを切った時の感触や音質も1DsMark2の方が勝っています。やはり、キャノンのフラッグシップ機と比較すると、性能に差が出るのは仕方がないでしょう。
5Dの場合、カメラ背後から見て左上面に付いているモードダイアルは、ぼくが愛用していたNikon系のFUJI
FinePix S3Proなどと同様のデザインと機能なので、Nikon系のデジタル一眼レフから買い替えたユーザーにとっては、ダイアル式操作の方が直感的で馴染みやすいです。
未来志向に精錬されたデザインのEOS-1Ds mark2(EOS-1系)には、カメラマンが長年親しんだクラシックなダイアルをカメラ軍艦部(上面)から廃し、代わりに三つのモードセレクターボタンで撮影モードなどを設定するので、咄嗟の場合は初歩的なISO感度の切替の方法をど忘れして、「どない、するんやったかいな?」とテンパって(うろたえて)しまいます。
やはり、カメラはスマートなボタン切替式より、伝統的な回転ダイアルやレバー切替式の方が視覚的に馴染みやすく安心できますね。
5Dを買って、凡そ1カ月後の 2006年4月25日に、伊勢志摩半島の伊勢市磯部町にある近鉄のアミューズメントパーク「パルケエスパーニャで5Dのテスト撮影をすることにしました。
2006年は還暦を超えていましたので、近鉄難波駅〜志摩磯部駅間の往復乗車券と往復特急券、磯部〜パルケエスパーニャのシャトルバス乗車券、パルケエスパーニャの入園料込みで7000円という「まわりゃんせ」という、高齢者割引の企画乗車券を買って行くことにしました。
大阪市内から愛車でパルケまで往復すれば、高速代やガソリン代、パルケの入園料を入れると7000円で済まないでしょうね。だから「伊勢志摩ライナー」に乗っていきました。2013年3月のダイヤ改正から近鉄観光特急の「しまかぜ」も、水曜を除く毎日1往復運転しています。松坂牛の焼き肉弁当を食べたいですね。
旅行当日は、大阪ではどんより曇っていたのですが、志摩磯部駅の上空は美しい青空がスカッと広がっていました。早速、パレードにはフラメンコの衣裳とマタドール(徒歩闘牛士)の衣裳を着たスペイン人の男女が、数台のフロートを先導しているところをスナップしました。テストに持っていった2本のズームはf2.8の明るさなので、AF合焦スピードが速くて正確で、帰宅してからPowerMacG5に画像を転送すると、発色がキレイで、とくに望遠ズームのEF70-200
f2.8L IS USMの描写力は、素晴らしくて驚きましたね。このレンズがもう少し軽ければ、何処へでも持っていきたのですが。このページにサンプル画像を貼っておきました。WEB用に圧縮してもキレイです。
ぼくの5Dは、その後、那智の火祭りの取材、唐津くんちの取材、鞍馬の火祭の取材、平野郷夏祭りの取材が、いずれも撮影途中で俄雨に見舞われる撮影になり、一応雨に濡れない対策もしたのですが、迫力のある写真を撮るのを優先したために、5Dは、松明の高熱や水しぶきを浴び、スピードライトの580EXと共に調子がへんになり、5D後継機の、EOS
5D MarkIIが新発売されてから入れ替えました。
2006年4月29日初稿、更新2014年2月23日 尾林 正利