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アオリレンズのTS-E 24mm f3.5L装着で、様々なプロのテクニックが使える

わが愛機 Canon EOS-1Ds Mark II (Mark2)


上の写真は、EOS-1Ds Mark2に建築写真やインテリア撮影に必要なTS-E 24mm f3.5 Lレンズを装着したところです。
キヤノンさんのTS-Eレンズは、2009年12月時点では5種類(※17mm,※24mm新型,24mm従来型,45mm,90mm)が販売されていて、とくに写真の24mm広角レンズは、コマーシャルフォトや建築写真のプロには人気の高いレンズです。プロとして料理写真を撮る方なら、TS-E 45mmのレンズも必須になります。TS-E90mmは、四角い形をした商品の撮影に適しています。
(※TS-E17mm f4 LとTS-E24mm f3.5 L 2型は、2009年6月から販売)

最近になってニコンさんも、電磁絞り付きのアオリ付きレンズ(PC-Eシリーズ)を3種販売されていますが、35mm判一眼レフ用のアオリレンズの元祖はニコンさんで、ぼくは昭和42年(1967年)頃にプリセット絞り式のPCニッコール35mm f3.5(後にf2.8に改良)や PCニッコール28mm f4を買ってニコンFに付け、手持ちでアオって、店舗外観や店内、工場外観や工場生産ラインの写真を撮っていました。
クイックリターンミラーの奥行きが短いニコンFにPCニッコールを装着してアオリ撮影した場合、アオリ量が限界に近づくと、ファインダー上部が暗くなる「ミラー切れ」の現象が起きましたが、ニコンF2からはクイックリターンミラーが大きくなり、ミラーを跳ね上げるメカニズムにも改良が施され、PCニッコールやフォーカシングユニット併用の超望遠レンズを装着してもミラー切れがなくなりました。

現在では、とくに広角レンズの描写に目立つ被写体(建物など)の歪みは、画像処理ソフトのAdobe PhotoshopCS2以降で、「編集→変形→自由な形に」を使えば、通常の広角レンズや広角ズームで撮っても、建築物の「すぼみ」は、ビューカメラ並みに補正できますし、レンズの歪曲収差(画像周辺の垂直線と水平線がタル型や糸巻型の曲線になる)も、「編集→変形→ワープ」で補正できるようになりましたが、やはり、撮影後に写真修整をしない方が画像処理の作業が短縮できます。

また、手前の被写体から奥の被写体までピントを合わせるパンフォーカスの修整は、いくら万能のPhotoshopでも修整は不可能です。(近景にピントの合った写真、中景にピントの合った写真、遠景にピントの合った写真を三枚合成すれば、パンフォーカスの写真ができますが、CG処理が大変です)やはり、撮影時にビューカメラのカメラムーブメント機能を使うか、アオリ付きレンズでパンフォーカス撮影しておく方がベストなのです。

TS-Eレンズは、手持ちでビューカメラのようなアオリ撮影がカンタンにできるので、プロのEOSユーザーに重宝されているレンズだと思います。キヤノンさんはTS-Eレンズでアオリ撮影をする時は、三脚の使用を推奨されていますが、被写体のアオリ方に自信のある方は、手持ちであおって、ジャンジャン撮ればいいですよ。下の作例写真は、全部手持ちで撮りました。60分の1秒のより遅いスローシャッターを切る室内撮影では三脚とリモコンを使った方がいいでしょう。但し、TS-Eレンズを使ってパノラマ写真を撮る時は、がっしりした三脚と水準器付の雲台が必須になります。

アオリの利く4×5インチ判のビューカメラで建築写真を撮ると、カメラのセッティングからシャッターを切るまで、早い人で10分ぐらい掛かりますが、EOS-1Ds Mark2にTS-E 24mm f3.5 Lレンズをつけて建造物を手持ち撮影すれば、1分も掛かりません。少しでもアオると、AE(自動露出)が利かなくなるので、手動で露出補正するには、チョットした経験とコツが要りますが、デジタル一眼レフは、その場で撮影結果がモニターでチェックできるので、失敗が少なくなりました。
二度と撮れない、失敗が許されないお金の掛かった撮影では、邪魔くさいですが、フィルムカメラのEOS-1でも抑えておいた方がいいでしょうね。デジタルカメラで外壁に四角いタイルで貼った建造物を撮影すると、パソコンモニター画面やプリントでは、特定の倍率にすると、建物の壁面に油膜のようなモアレパターンが時々発生するからです。

原因は、イメージセンサーの撮像素子(フォトダイオード)の配列パターンと被写体のタイル配列パターンが干渉して、不要なパターンが現れるのです。銀塩フィルムに塗布された、感光物質のハロゲン化銀は多角形の粒子ですが、粒子の配列が不規則に散らばっているので、写真フィルムではモアレは発生しません。だから、それなりの撮影料が頂ける商品撮影や建築撮影は、デジタルがメインであっても、保険用にフィルムでも抑えておいた方が賢明だと思います。

TS-E 24mm f3.5 Lレンズは、遠景の歪曲収差がよく補正されており、建造物の竣工写真の撮影によく利用しています。同じ建築物をEF24-70mm f/2.8L USM レンズで撮るよりは、TS-E24mm f/3.5Lレンズで撮る方が直線の歪みは少ないからです。因みに、EF24-105mm f/4L IS USMは、80mm以上の望遠側で糸巻き型の歪曲収差が目立つので、建築写真には向きませんが、スナップや風景なら気にならないでしょう。

一般的なカメラとレンズの関係は、撮影レンズの光軸中心をフィルム面(撮像面)の中心と直角に一致させるように設計されていますが、TSとは、Tilt(ティルト:カメラの焦点面中心に入射するレンズ光軸中心の傾きを変える)とShift(シフト:カメラの焦点面中心に入射するレンズ光軸の中心を水平または垂直方向に移動させる)のことで、ワザと光軸の中心を傾けたり、ずらすことによって、35ミリ判一眼レフカメラでも、大判ビューカメラのようなアオリ撮影ができるように工夫されたものです。

大判のビューカメラでは、レンズそのものにはアオリ機構はなく、カメラのレンズボード(前枠:まえわく)とカメラバック(後枠:あとわく)に組み込まれた、カメラ・ムーブメント機能を駆使してアオリ撮影(広角レンズ使用の場合は、袋蛇腹に交換)をしますが、TS-Eレンズはレンズ鏡胴部分にアオリ機構を組み込んだ特殊なレンズなのです。
TS-Eレンズのイメージサークルの直径は、3種類とも58.6mmで、画像四隅のケラレを配慮して、シフト量が11mmに制限されています。ティルト量は、光軸中心線から片側8度までティルトアオリができます。なお、レンズのティルティングで、絞り開放近くでも近景から遠景までパンフォーカス効果が得られるのは、シャインプルフの法則を応用したものです。
TS-Eレンズは、構造的には1980年代のCanon new F-1用・FDマウントのTS 35mm f2.8レンズのメカニズムをEOS用のEFマウントに移植改造し、レンズ側にも電気接点を設けて自動絞化を図り、アオラない時はAE撮影もできるように改良されていますが、フォーカスはマニュアルフォーカスのままです。

広告写真のプロには、写真が使用される媒体や予算によって、35ミリ判カメラで建造物の外観撮影や戸建て住宅・マンションなど、室内撮影の依頼がありますので、広角のアオリ付きレンズが必須なので、ぼくも愛用しておりました。ただ、35mmという広角は、画角的には標準なので、引きの無い狭い場所では殆ど役に立たず、35ミリ判カメラの24mmは、超広角レンズなので、狭い場所でも使えて丁度良い焦点距離だと思いますね。
キャノンさんから、TS-E17mm f4Lも発売されており、このレンズはまだ使ったことはありませんが、分譲マンションの入居募集チラシ広告には、かなりの威力を発揮すると思います。

マンションの8帖のリビングルームを紹介するのに、超広角の17mmを使って撮ると、ヴェルルサイユ宮殿の大広間のように写って?誇大広告になってしまいますから、カメラの引きのないキッチン周りとか、バス・トイレの撮影に使えば、妥当な使用法で威力を発揮すると思いますし、六本木の森タワーなら、大通りの歩道から縦位置でスッポリ収まると思いますね。しかもアオリが効くのですから、上窄まりの歪みも少し補正されて、建築写真関係の方々には重宝されているのではないでしょうか。ただ、レンズが魚眼レンズのように鏡胴から飛び出しているので、レンズフードが使えず、逆光撮影には、ハレーションカットに助手が要るみたいですね。

TS-Eレンズの変わった使い方として、画面の上下左右に目一杯シフトさせて2枚または、4枚の写真を撮って1枚の写真に合成して大判の写真を作成することも可能です。この場合は手持ち撮影は絶対ダメで、水準器の付いた三脚を使って、カメラの水平・垂直レベルをシビアに調整する必要があります。2013年11月から販売された、最新のNikon Dfには、光学ファインダー内に水準器が表示できて、この種のレンズを使う時は助かりますね。
EOS-1DsMark2が新発売されて1年も経ってから、購入リポートを書くことには、ニュース性に乏しく、ためらいもありましたが、2009年12月では、EOS-1DsMark2はカタログからドロップアウトし、EOS-1DsMark3が販売され、2014年のEOS DIGITALのハイエンドモデルは、EOS-1DXになっています。
ご興味のある方は、TS-Eレンズの作例写真の後のリポートもお読み下さい。

カメラ:Canon EOS 5D
レンズ:EF50mm f2.5コンパクト・マクロ使用
露出:マニュアル:125分の1秒・f18〜22
照明:コメット・ツインクルTW-04F2を2灯使用
撮影:尾林 正利 2006/5/22


シフト・アオリの例
地上から建物を見上げて撮るとき、長方形の建物の形が極端な台形にならないように、補正する場合に利用。
厳密に建物の形を平行に補正し過ぎると、遠近感が無くなって不自然に写る。シフトアオリ補正の匙加減は。撮影者のセンスだ。

ティルト・アオリの例
上下方向にレンズを傾けたり、左右方向にレンズを傾けて
パンフォーカス写真を撮りたい時に利用する。
奥行きのある料理を撮る時に、ティルト・アオリは威力を発揮

このレンズは、工場出荷時の新品ではシフト方向とティルト方向が直交式になっていますが、料理写真などを撮る写真家は、同方向に並行してアオる方が都合がいいので、購入後にキャノンさんに頼んで改造して貰うことも可能です。レンズは正位置から左右に90度ずつ回転します。

だから、理想を言えば、TS-Eレンズは直交式と並行式の同じ焦点距離のレンズが2本ずつ必要なのです。このレンズのシフト目盛は、センターから1mm刻みで11mmまで上下または左右にシフトできます。

シフト・アオリは、レンズマウントに近い方のシフトノブを指で回して行います。反対側 のノブでロックします。レッドライン(赤い目盛部分)は、画像がケラれる可能性を表示したものですが、短辺方向のシフトなら、画像がけられる可能性は低いです。

ティルト・アオリは、Canonのロゴの傍にあるノブを回してレンズを左右に振ったり、上下に傾けて、絞り開放でパンフォーカスの写真が撮れます。
シフトとティルトと二つのアオリを併用する場合は、専用のレンズフードを付けると画像のケラレを注意しなければなりません。

TS-E24mmの用途は、インテリアや建築撮影が殆どなので、写真のようにレンズを上昇させてアオリ撮影(フロントライズ・前上げ)をするケースが多いと思います。俯瞰撮影では、レンズをセンター目盛り位置より下方側にシフト(フロントフォール・前下げ)します。フォーカシングスクリーンはオプション販売の方眼レーザーマットを使った方が被写体の歪みを修正しやすくなると思います。

TS-E24ミリは、あおらない時はカメラのAEが正しく作動して、適正露出が得られました。
しかし、レンズを一旦シフトさせると、カメラ内蔵の露出センサー(21分割TTL開放測光)モジュールは、レンズの光軸中心がずれるために測光誤差を生じ?建築物の撮影では、上方へ7mmシフトでは約1EV、下方の7mmシフトでは、何と2EVの測光誤差が出ます。あおった時のファインダー内表示では、誤った適正露出値を表示しますので、あおらないときの適正露出値に手動で戻さなければなりません。

シフトアオリ無しで、AEモード:シャッター速度優先AE、測光モード:評価測光の場合は、
上方(空方向)に7mmシフトでは、ファインダー内表示下のAE露出値があおらない時より約1段絞られて、そのまま撮れば1段アンダーの写真になります。
必ず+側へ露出補正をして、あおらない時のAE露出値に戻すこと。つまり、上方にあおった時は、カメラのAE測光値をサブ電子ダイアルを3クリック分回して、1絞り開けること。580EXを併用する時は、580の露出補正も+1絞りにして、カメラの露出補正値と合わせることが必要になってきます。

下方(床方向)に7mmシフトでは、ファインダー内表示下のAE露出値が、あおらない時より約2段分も開けられて、そのまま撮れば、救いようのない約2段の露出オーバーになってしまいます。
必ず露出補正をして、あおらない時のAE露出値に戻します。つまり、下方にあおった時は、カメラのAE測光値より2絞り絞ること。580EXを併用する時は、580の露出補正も−2絞りにして、カメラの露出補正値と合わせること。但し、これは評価測光の時に起きる問題で、TS-E24mmを使用される方は、あおった時の露出補正のデータを取っておかれた方がいいでしょう。

アオリなしの作例1・・・TS-E24mm f3.5L でノーマル撮影


アオリ適用の作例2・・・TS-E 24mm f3.5L でシフト・アオリ操作 80%適用


アオリなしの作例3・・・TS-E 24mm f3.5L で、手前の花にピントを合わせ、アオリ操作 なし


アオリ適用の作例4・・・TS-E 24mm f3.5L でティルトのアオリ操作で、ピントをパンフォーカスに


上の写真は、大人の大阪人なら誰でもご存知の大阪市中央公会堂です。ここが無人になる一瞬があって、5月の中旬の休日にTS-Eレンズのテストに行きました。
快晴でお出かけ日和なのに、無人なんて考えられませんが、急いで手持ちで撮影しました。TSE 24mmは、アオリ無しでは普通のレンズですが、本格的にシフトアオリを使えば、4×5判のビューカメラ並のポテンシャルを発揮します。
作例を比べて見てください。このレンズでは、もう少しあおれますが、100%あおってしまうと、不自然に見えたので8分目におさえました。ポピーの花壇は、花博のあった鶴見緑地公園で撮影しました。ティルト操作でパンフォーカスにしました。至近距離から奥の方までピントが合うなんて、プロの料理写真家には必須のレンズですね。

カメラ:Canon EOS-1Ds Mark2
レンズ:TS-E24mm f3.5L 露出はマニュアル
撮影年月日:2006年5月21日
撮影:尾林 正利


わが愛機 Vol.5 Canon EOS-1Ds Mark IIの購入リポート

2006年5月27日:初稿 (2008/11/19、2014/2/22に一部更新)
写真と記事:尾林 正利

 

2006年の3月15日に、35ミリ判フルサイズセンサーを搭載した、デジタル一眼レフのCanon EOS 5DとEOS-1Ds MarkIIを同時に買ったが、 先ず、ボディが軽くてカメラ操作の簡単なEOS 5Dから使い始め、一ヶ月間に10回ほど撮影に使ってみて、Canon EOS 5D(以下5Dと記述)には、ようやく慣れてきた。

5Dは、Canon EOS-1Ds MarkII(以下1Ds Mark2と記述)より、カメラ背面の液晶カラーモニターが大きくなって、メニュー設定の文字サイズも大きくなり、撮影済みの画像が見やすくなったことや、1Ds Mark2にはないマルチコントローラやサブ電子ダイアルの中央にセットボタンを搭載するなど、EOS DIGITALの使い勝手が更に改良され、5Dにはまだ改善の余地があるものの、ユーザー・フレンドリーな設計で使いやすいカメラになっている。

また、EOS普及機のカメラ上面(軍艦部とも言う)に使われている、シャッターダイアルのような、回転式モードセレクターダイアルの採用は、EOS-1や1D系の3個のモードボタンより操作が直感的で、人によって好みは違うが、銀塩カメラのNikonFやF2,そしてCanon newF1に長らく慣らされてきた熟年カメラマンにとっては、電話はプッシュ式操作の方がラクチンだが、カメラのモードセレクタは、プッシュ式よりダイアル式の方がしっくりとくる。

2014年2月に、ニコンさんの大阪サービスセンター(ヒルトンプラザ別館)に行って、ダイアル操作式の”Nikon Df"を触ってきたが、何と、シャッタースピードの切替が1軸不回転シャッターダイアル式で好感が持て、半世紀前の名機、Nikon Fに復帰した感じだ。だから、オールドファンにとっては、取説がなくても使い易かった。1秒に10コマの連写に拘らなければ、AFスピードも快速でかなり使えるカメラだが、記録メディアがSDカード専用で、CFカードが使えないのが残念。やはり、個人的にはダイアル式カメラの方が馴染みやすい。

Nikon Dfのような、カメラ本体のマイコン制御のメカや画像処理の仕組みは超ハイテクで、外観がクラシックな皮を纏ったカメラのニーズが、かなりメーカさんに寄せられているのだろう。カメラ上面にシャッターダイアル部分がないと寂しさを感じるのは、中高年ユーザーだけなんだろうか?カメラをデザインする工業デザイナーは、自分がそのカメラを買って長く愛用するワケでもないので、見た目を優先して奇抜なカメラをデザインするが、未来志向を謳うデザインが、必ずしも人間工学的(ヒューマンファクター的、エルゴノミクス的)に使い勝手が良いとは限らない。

今回リポートする1Ds Mark2の方は、5Dを優先的に使っているので、5Dに比べて出番の機会が少なく、まだ慣れるところまでには至っていない。このページに掲載した1Ds Mark2のファースト・インプレッションでは満足なリポートが書けないかも知れない。

先ず、1Ds Mark2を持った印象は、5Dよりカメラの質感に高級感が漂っており、カメラ各部の仕上げが丁寧な作りで、とても良いと思う。
1Ds Mark2を使うと、写す方には「写欲」というアドレナリンが湧き、写される方も「最高級カメラで撮って貰える」と満足するオーラを持ったカメラだ。2006年現在は、建造物の竣工写真やコマーシャルフォトの撮影に稼働している。かなり後で知ったのだが、本機はマルチプロセッサー仕様らしく、カメラ作動専用のCPUと画像処理専用のCPUを2基搭載し、従ってUSMレンズのAF合焦スピードと画像処理のスピードを速めている。

シャッターボタンを押した時の感触は、5Dのようなシャッターが切れるタイムラグや引っ掛かり感がなく、人差指を軽く押すだけで一瞬に切れる。シャッターが切れる時の音質も、パワーのあるモードラ付きのフイルム用一眼レフを使っているようで心地よい。

但し、別売のワイヤーリモコン(RS-80N3) のデザインと材質が、成人男性の掌(てのひら)には細すぎて滑りやすく、手に馴染まない。押しボタンの位置もコード側(電源側)に寄っているので使い辛い。早く改善して欲しいところだ。

RAWデータに設定したモデル撮影でも、秒速4コマで11コマまで連写可能(JPEG/Lで32コマ)なので、これぐらいのパワーがあれば、次々とポーズと表情を変えるファッションモデルの動きに合わせてシャッターを切っていける。(因みに2014年2月時点のEOS-1DXは、フルサイズデジタルの1810万画素で、秒速14コマ連写可能(シャッタースピード250分の1秒より高速で。低温では秒速10コマ)
デジタルで3〜4コマ連写して、CFカードへ画像データ読み込みの為、シャッターが切れなくなってしまうと、一瞬、不安に駆られてドキッとするが、1Ds Mark2では、そのようなことは起こらない。

デジタル撮影の欠点は、カメラの作動音がせず、静かなことである。
フィルムカメラのような喧しいモードラの音がしないので、モデルさんの話ではカメラマンがいつシャッターを切るのか、ポーズや表情を変えるアクションのタイミングがわからないので、リズムに乗りにくいらしい。

劇場用の映画撮影でも、監督が「3、2、1、アクション!」と号令を掛ければ、シネキャメラのミッチェルやアリフレックスが、フィルムを駆動する音が演技する俳優に伝わるが、テレビ映画のビデオカメラでは音がしない。スチールもムービーもデジタルだとカメラの作動音が静かなので、昔気質の俳優さんは気合いの乗りが違うようだ。とくに、Canon newF-1のモードラは、駆動音が高くて、モデル撮影には適していたのだが...。

今のモデルさんは、スタジオ用のストロボ電源に付いているチャージ充電音を聞いて、表情やポーズのリズムをとることになるが、フラッシュを使わない場合は、モデル撮影が静かすぎるので、モデルを乗せる工夫がいる。
少し前に、荒木師匠(ぼくの師匠ではないが)が、アサヒペンタックス6×7でポートレート撮影されている姿がテレビで紹介されていた。荒木氏がシャッターを切ったあとで、アサペン67の重いフィルムレバーを巻き上げる間があって、写される側にも3秒ほどのゆとりが出来るわけだ。写される側を決して追い込まない。デジタルはいつ撮られるかわからないので、写される側にとっては表情が強張りやすいのだ。

最近のぼくは、カメラ任せのAE/AFに頼って、軟弱なカメラマンになりかけている。写真をかじり始めたアマチュアと何ら変わらない。
1Ds Mark2でUSM(超音波モーター)駆動のレンズを使ってのAF撮影は、手でピントを合わすより素早く、しかも正確にピントが合って快適だ。四年前(2003年)まで、マニュアルフォーカスの一眼レフ、Canon newF-1を仕事で使っていたのが、はるか遠い昔のように感じてしまう。Canon newF-1用のFD80-200mm f4Lのレンズから、フルサイズEOS DIGITAL用のEF70-200mm f2.8L IS USMに買い換えると、もう、元には戻れない。
Canon newF-1のモードラ音は喧しかったが、モデルさんには好評であった。しかし、会議や講演会の取材などには不向きで、フィルムの巻き戻しには、会議室から出て廊下で巻き戻し、ずいぶん気を使ったものである。

昨今、高性能なAE/AFカメラを使い出して、「オートマ(Automatic)」のカメラで一旦ラクすることを覚えると、4×5インチの大型ビューカメラで写真を撮りたい気持ちが、だんだん湧いてこなくなってしまった。原始的なカメラで写真を撮るのが面倒臭くなってくるのだ。しかし、写真を撮りたい気持ちは、それ程衰えていないのだが...。

昨今では、スタジオや取材先などで、大型ストロボで多灯ライティングして、マニュアル露出で撮影をしている時だけ、プロフェッショナルなカメラマンに戻ったような気がする。
1Ds Mark2は、電池を入れたカメラボディの重量が1.55kgで、手持ち撮影ではちょっと重いのが気になるが、50歳になるまで中判カメラのPENTAX6×7を使って、手持ちでモデル撮影していたぼくにとっては、何とか我慢できる重さだ。しかし、ロケなどで機材の持ち歩きを考えると、カメラやレンズは軽い方が有難い。
ま、1Ds系はスタジオ用に設計されたデジタル一眼レフだから、重いのは我慢しょう。

ぼくは、シャッターを切る度に液晶モニターで撮った画像の確認をしているが、4秒ぐらいの画像表示が見やすい。
モデル撮影の時は、ライティングの露出テストのプレビューが済めば、本番ではワンショット撮影直後の画像表示を「切り」にして撮影をする方がリズムに乗れる。ワンショット毎にプレビューしていては、間が空きすぎて、リズムに乗れない。また、スタジオにパソコンとモニターを持ち込んで「確認」しながら撮影すると、シューティングが何度も中断され、仕事が捗らない。

機能てんこ盛り1Ds Mark2のファインダー内表示は、5Dより情報量が多すぎるので、ファインダー下部と右側の二個所に表示され、このファインダー表示に慣れるまでチョット時間が掛かる。
できればファインダー内情報表示を下部にまとめたいところだが、そうすれば表示全体がが小さくなって見辛くなってしまう。

ファインダーフレーム右側の露出レベルの表示(Canon F-1からの伝統)が不必要な時は、ボタンを押して消すようにすれば、ファインダー内が少しスッキリするのだが、現状では常時表示になっている。
Canon F-1のユーザーの多くがEOS-1のユーザーになったわけだから、ファインダー内右側に表示していた露出レベル(CanonF-1では、追針式アナログメーター搭載)を簡単に廃止するわけにはいかなかったのだろう。

ところが、今回のテストのように、マニュアル操作のTS-Eレンズを使って、レンズをシフトした時のアオリ量に応じて、AE撮影の露出補正を頻繁に行う時は、右側の露出レベルの表示は大いに役立ったのである。
1Ds Mark2の電源スイッチを音声マークに合わせ、サブ電子ダイアルのスイッチを入れておくと、サブ電子ダイアルを時計方向・反時計方向にワンステップずつ回転させるだけで、3分の1段ずつ露出がアンダー目に、或いはオーバー目に補正できて、露出レベルのファインダー内表示は、とても重宝する。
お陰で、シャッター速度優先AEによる適正露出値を参考にした、AE露出補正のブラケティング撮影が手動でもカンタンにできた。

ただし、AEモードで露出補正をしたままにしておくと、電源を切っても、前回の露出補正値(段数)が効いたままになっているので、新たに次の写真を撮る時は、ファインダー内右側の露出レベルのマーカー位置が0に戻っているかを確認しなければならない。それに気付かず撮影をすると、露出ミスのチョンボをしでかす。
ぼくも、うっかりミスで、露出オーバーの写真をワンカット撮ってしまった。1Ds Mark2で露出補正をした後は、シャッターを切った後に露出補正を0に戻す習慣を身に付けよう。

1Ds Mark2の写りは、カラーマトリックスをsRGBより再現色域の広いAdobe RGBにすれば、JPEG標準でも、被写体にかなり忠実な発色をするので気に入った。但し、CMYKの商用印刷では、Adobe RGBの色域より再現される色域は狭まる。しかし、AdobeRGBの色域に対応したプリンターなら、より鮮やかなカラー再現が可能になる。
やはり、業務用に使う場合は、被写体に忠実な発色と質感を描写するカメラの方がいい。

1Ds Mark2と一緒に買った5Dの場合は、ピクチャースタイルの搭載でカメラ側でカラーマトリックス(色調)と現像パラメータを決めてしまうので、画像処理を得意とするぼくの楽しみが少なくなってしまうが、1Ds Mark2で撮った場合は、画像処理の楽しみが残る。

同じフルサイズの5Dで撮るか、1Ds Mark2で撮るかは、仕事の内容と予算や納期で決まるだろう。
1Ds Mark2と5Dの両機は、ほぼ同じ35ミリ判フルサイズ(約24×36mm)のCMOSセンサーを搭載しているが、CMOSセンサーの構造と解像度が異なり、また、両機は同じ映像エンジンのDIGIC2を搭載していても、カタログ写真を比較すると、1Ds Mark2用のDIGIC2と5D用のDIGIC2とでは、「DIGIC 2」チップの品番が異なっている。また、1Ds Mark2と5Dでは、使用されているプリント基板が違うし、回路のレイアウトも違う。

ここで、デジタルカメラについて、カメラマンとして知っておいた方がためになる、常識的な知識をチョットだけおさらいしておきたい。
デジタル一眼レフカメラは、殆どが銀塩一眼レフのボディーを改造したもので、パトローネ室に電子部品が入り、フィルム巻き取り室には、専用バッテリーやCFカードが入るスペースになっている。
フィルム面には、銀塩フィルムの代わりに、一枚の撮像板(※さつぞうばん:イメージセンサーとも言う。CCDセンサーやCMOSセンサーが多い)が配置されている。

感光材料(感材)が銀塩のカラーフィルムの場合は、大まかに言うと、塩化銀を混ぜたエマルジョン・臭化銀を混ぜたエマルジョン・沃化銀を混ぜたエマルジョンが、透明なトリアセチルセルロース フィルムの上に3層に塗布されていて各層の上はカラーフィルタでコーティングされている。
カメラのシャッター幕が開いて、一旦フィルムに露光されると、フィルムの乳剤面(膜面という)は、光の像によって3種類の銀塩が化学反応を起こし、人間の眼には見えない潜像(せんぞう)として生フィルムに記録される。適正露出とは、銀塩フィルムの場合は、一本のフィルムに適正感度があって、その感度に合わせた、光量と照射時間をコントロールすることを表す。

この潜像は撮影後に、暗室内において化学的なフィルム現像処理工程を経てから、我々はフィルム上に定着した画像を見ることができるのである。カラーリバーサルフィルムの場合は、プロラボで現像処理に要する時間は、第一現像の開始から乾燥終了まで、E6プロセスで約2時間ぐらいだ。
ネガフィルムやカラーリバーサルフィルムに写った画像を見る時は、フィルムのベース面(膜面の裏側)から観賞する。裏から見れば、正像に見えるからだ。これぐらいの知識は、カメラマンなら誰でも知っている。

感光材がイメージセンサー(撮像板)の場合は、フィルムで撮るより複雑なプロセスになる。フィルムは工場で生産するときに感度が決まるが、デジタルでは、ユーザーが自分で感度を設定できる。
デジタルカメラの原理は、レンズが捉えた光の像が、イメージセンサーの表面に格子状に集積された約6μm × 6μm〜12μm × 12μm(ミクロン=マイクロメートル、因みに人間の精子の全長は、人種や身長に関係なく60ミクロン)平方の微細なフォトダイオードに当たると、フォトダイオードは受光した光量の強さに反応して、正電荷と負電荷の中和バランスが崩れて帯電する。これを「光電変換」と言う。

この現象はフィルムに感光した潜像のようなものである。正と負の電荷は、同種電荷間では反発(斥力という)し、異種電荷間では引力が働く。
フォトダイオードに帯電した電荷の斥力や引力の量を電気力(クーロン力)と言う。それぞれの受光素子には、+−の電極が繰り返し並べられた転送部分が作られていて、ここに特殊な信号を送ると、受光素子が蓄積している電荷が順々に外部へ出力される仕掛けになっている。

イメージセンサーに蓄積された電気力をデータ転送の効率化とスピードアップを図るため、多チャンネルに分散して(線路を単線から複々線にして)アナログ出力させ、次の「ADコンバータ(AD変換を行う)」と言うチップとフロントエンド処理回路(アンプ回路)を使って、センサーが記録したアナログデータを8ビットJPEG(RGB各色が256階調・3色掛け合わせの色数は、1677万色)から12ビットRAW(RGB各色が4096階調)のデジタル信号に変換する。

デジタルカメラと呼ばれる所以は、撮像素子のアナログ出力をAD変換(アナログ信号からデジタル信号に変換)して画像処理を行うからである。電子カメラはアナログ信号のままで映像を創出するので、デジタルとは呼ばない。
ところが、感光物質のフォトダイオード自体は、光の明暗階調(ダイナミックレンジの幅)しか判別できないので、カラー撮影には不向きであったが、フォトダイオード1粒ずつの受光面に、光の三原色フィルター(Red,Green,Blue)」のどれかを被せることで解決している。

このようにイメージセンサー上には、シグマSD9が採用しているFOVIONセンサーを除いて、R画素、G画素、B画素のフォトダイオードが規則正しく交互に入り交じって配列されているが、その構成比率は均等ではなく、人間の眼の感色性に合わせて、G画素が多めに配分されている。
例えば、キャノンさんのCMOSセンサーでは、カタログ掲載の図解を見ると、R:G:B=1:2:1になっている。FUJI FILMさんのSuper CCD HoneycomSR2センサー(S3Pro用)では、R:G:B=5:9:4という構成比になっている。

例えば1200万画素クラスのセンサーであれば、キャノンさんのCMOSセンサー場合、R画素300万、G画素600万、B画素300万という構成比になる。
因みに、FUJI FILMさんのSuper CCD HoneycomSR2センサーでは、R画素分167万+167万、G画素分300万+300万、B画素分133万+133万というダブル画素(※1)の構成比になっている。

※1の+○○○万というのは、画像のダイナミックレンジ(明暗階調の幅)を広げるために、原色フィルターを外したフォトダイオードの数である。
さすが、フィルムメーカーさんだけに、実写テストの結果、ダブル画素構造の発想は素晴らしいものがある。したがって、S3Proでは、1Ds Mark2より多い14ビットのAD変換が可能になっている。

1Ds Mark2搭載のCMOSセンサーは、受光面が7.2μm×7.2μm(ミクロン、またはマイクロメートル:1000分の1mm)の正方形のフォトダイオードを使い、有効画素数が1670万画素に達し、最大画像解像度4992×3328ピクセルの画像サイズを形成する。
因みに2002年12月に発売されたEOS 1Ds 搭載のCMOSセンサーは、受光面が8.8μm×8.8μのフォトダイオードを使い、有効画素数は1110万画素で、最大画像解像度4082×2718ピクセルの画像サイズを形成していた。
このように、限られたフレーム内に、解像度を上げるためにフォトダイオードを微細化すると、現像後の画像はダイナミックレンジの幅が狭くなってしまう。その結果、白トビ、黒潰れが発生しやすくなるが、1Ds Mark2を使ってみると、フォトダイオードを微細化しても階調は滑らかである。

因みにEOS 5DのCMOSセンサーに集積されたフォトダイオードのサイズは、1Ds Mark2より大きい8.2μm×8.2μmタイプ(EOS1D Mark2も同じ)である。
フォトダイオードを微細化しても、ダイナミックレンジの幅が広くとれるのは、撮像板の微細化技術のめざましい進歩のお陰だろう。従来の科学の常識はすぐに覆される。
フォトダイオードの受光面に集光させるマイクロレンズの効率化によってダイナミックレンジの幅を広く改善し、画像処理のLSIチップの中にノイズリダクション(ノイズ低減)回路を組み込む技術の進歩によって、画像再生のSN比(※Signal to Noise ratioの略)の数値を高くする工夫がなされているのだ。

具体的には、高感度撮影の時や長時間露光の時に発生する画像のざらつき(ノイズ)を低減させる工夫だ。今のところ、1Ds Mark2でISO400より感度を上げて撮ることは滅多にないし、夜景撮影もしないので、どれぐらいの感度や露光時間で画像にザラツキが発生するのかは不明だ。ノイズテストは、またの機会に行いたい。スタジオ撮影では、シャドー部が中途半端に潰れないライティングを心掛ける必要があるようだ。

また、被写体には無い色が、デジタルカメラで撮った画像の所々に出ることが多い。これを偽色(ぎしょく)と言うが、不要な赤外光をカットする水晶板を使った2〜3層式ローパスフィルターの搭載などによって、偽色やモアレ現象の発生を抑えているようだ。
テレビ出演しているゲストの方の衣裳やネクタイが、チラチラして写って、目がチカチカする時がある。

これはテレビカメラの撮像素子の配列やモニターの走査線が、服の柄(パターン)と干渉を起こしてモアレ現象を起こしているのである。デジタルカメラでも同様なことが起きる。
テレビ局の撮影スタジオでは「カメリハ(カメラリハーサル)」で、視聴者に不快感を与えないように、出演者が着用しているテレビ写りの良くない服やネクタイ(モアレが出やすい衣裳)を本番前にチェックしている。

デジタル撮影で怖いのは、モアレの発生である。風景や人物には殆ど出ないが、風景でも遠景で細かい格子模様に見えるビルや、人物でも着ている服やネクタイが細かい格子模様だと、画像の所々にモアレが発生する確率が高い。
一旦画像にモアレが発生すると、Photoshopでの修整が大変だ。思わず「Oh My God!」と叫んでしまう。エアコン室外機や車のラジエータグリル、細かい格子柄のビルの外壁にモアレが発生しやすい。こういう被写体を撮る時は、撮り直しの利かない場合に備えて、保険としてフィルムカメラのEOSで抑えておいた方がいいと思う。1Ds Mark2で、モアレ発生がどの程度まで抑えられているかは、まだ分からない。

画質のクリヤーさ(鮮明さ)を表すSN比は、元来オーディオ機器に使われていた、音質の鮮明さを表す用語で、デジベルという単位で表記されていた。高級なオーディオアンプは、入力信号から出力信号まで、原音の忠実再生を目標として、高級なオーディオアンプでは増幅段のノイズを徹底的に排除した設計がなされていたが、昨今のデジタルカメラにもデシベルが引用されるのは、世の中も変わってきたなぁと思う。

1Ds Mark2でRAWまたはJPEG Largeの画質モードで撮ると、4992×3328ピクセルの画像サイズになる。
Adobe Photoshopで、このピクセル数に修正を加えず、解像度だけ350dpiにして、スクリーン線数175線の印刷に使うとB4サイズに、解像度だけ300dpiにして、150線の印刷に使うとA3サイズにも対応する。
なお、インクジェットプリンターからの出力では、用紙のグレードや用紙のサイズによって最適な解像度を自動計算して出力するので、解像度の設定がシビアな4色刷りの商用印刷より、大きな用紙サイズで出力することが可能だ。

1Ds Mark2のRAWモードで撮ってフォトショップデータに変換し、当時、ぼくが使用していたEPSON PM-4000PXでもA3ノビが余裕で出力できる。それを試すチャンスがやってきた。
大阪市平野区では毎年7月11日〜14日まで、杭全神社(くまたじんじゃ)の例祭「平野郷夏まつり」が開催される。

2007年の7月、旧平野郷の9町からだんじりが引き出される宵宮の宮入前に、世話役の方を通じて、町のだんじりを囲んで100名ほどの集合写真を撮った。
100名の日本人男性がおれば、カメラ好きは必ずいる。EOS-1Ds Mark2を知っている人もいて、地車委員会の幹部の方が、
「それ、キャノンのいっちゃん、ええカメラでっしゃろ。そんな、ええカメラで撮ってくれはりまんの!」
「そら、お祭りのときは、ええカメラで撮らないとね」。

本当は、5Dで撮る積もりだったのだが、後のことを考えて、EOS-1Ds Mark2のRAWで撮って、Adobe Photoshop CS2で画像処理し、EPSON PM-4000PXのPS 出力で、A3ノビにしたところ、階調がなだらかで皆に気に入られ、延べ200枚ほど、A3ノビでプリントした。
A3ノビを200枚も連続出力したら、プリンターが壊れるかと思ったが、ノントラブルだった。
1Ds Mark2と5Dの違いは、ただ、連写ができて、AFスピードが速いだけの物理的な差ではなくて、プリントでも差がでる。階調の滑らかさに差が出る。例えば赤の発色は、1Ds Mark2では僅かな違いでも被写体の赤色を区別して再現するが、ピクチャースタイルを同じ条件(忠実再生)にしても、5Dでは似たような赤は同色になって、出力の差が、89万と28万のカメラの値段の差だと思った。

35ミリ判フルサイズ機のEOS-1Dsのライバルには、CONTAX N DIGITALとKODAK DCS Pro 14nが販売されていたが、後継機種のEOS 1Ds Mark2の登場によって、ライバル二機種は早々と生産を終了してしまった。
CONTAX N DIGITALは2002年2月発売で、629万画素のCCDセンサー搭載、ボディ価格が80万円。
KODAK DCS Pro 14nは2003年5月発売で、1371万画素のCMOSセンサー搭載、ボディ価格65万円前後だった。

当分の間、キヤノンさんのEOS DIGITALが、世界のデジタル一眼レフ市場をリードしていくだろう。EOS-1DsMark2とEOS 5Dを実際に仕事で使ってみて、そのような印象を受けた。
と思っていたが、2006年11月にHasselblad H3D-39が発売された。3900万画素のセミ判デジタル一眼レフカメラの登場である。ボディと一体化されたカメラバック部分は、デンマークのPhase One社製で、6μm×6μmのフォトダイオードを3900万も集積した36.7×49mmのCCDセンサーを搭載している。最大記録画素数は、5,412×7,212ピクセルの画像サイズと16ビットでのRAW撮影が可能なようだ。2007年3月に、お台場で行われるフォトエキスポに行ったが、3900万画素のサンプルプリントは観られなかった。

その後、2007年11月から、2100万画素の35ミリ判フルサイズCMOSセンサーを搭載し、14ビットのAD変換ができるEOS-1Ds Mark3が販売された。販売価格は1Ds Mark2とだいたい同じで性能が大幅に向上している。2014年2月現在のキャノンさんのフラッグシップ機はCanon EOS-1DXで、1810万画素のフルサイズCMOSセンサー搭載で、秒速14コマ(常温時:低温時は秒速10コマ)の連写が可能な、スポーツ取材に向いたカメラになっている。高画質で高速連写を両立し、ソチ冬季オリンピックで大活躍している筈だ。

ライバルのニコンさんからも、2012年のロンドンオリンピックが始まる前の3月からフルサイズデジタルのNikon D4が販売され、同時期に、ハイアマチュア向けにNikon D800を販売し、3630万画素の高解像度を誇るフルサイズ機を販売し、高感度で高画質・・・銀塩写真の画質を超える。
アオリ付きレンズに関しては、2009年になってNikonさんにも、PC-E Nikkor24mm F3.5D ED, PC-E Micro Nikkor 45mm F2.8D ED, PC-E Micro Nikkor 85mm F2.8Dがラインアップされ、ニコンユーザーの需要に応えている。2020年の東京オリンピックには、どんなカメラが登場するのだろうか・・・楽しみだ。


 
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