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おおさか スケッチ

住吉大社の御田植神事(おたうえしんじ)


絵画制作:尾林 正利 平成4年(1992年) 6月14日に御田植神事をスナップ取材。
1992年9月下旬に一週間かけて制作し、9月30日に完成。


梅雨入りと言えば、ぼくは60年前(小学生だった頃)の大阪府南河内郡の田圃で田植えしている人々の光景が、今でも脳裏に浮かんできます。1954年当時の大阪府では、上の画のように代掻きには本当の農耕牛を使っていました。当時は現在のようなエンジン付の乗用田植機なんて便利な農機はありませんでした。

今回は、毎年6月14日に住吉大社の御田(おんだ)で行われる御田植神事の様子を描いたスケッチを掲載しました。ここの田植えは農機を使わず、伝統に則って昔ながらの手植えです。懐かしいですね。
上の絵は、平成4年(1992年)6月14日に「すみよっさん(住吉大社)」へ行って、見学料を払って取材したスナップ写真を参考にして、平成4年9月末に画を仕上げたものです。

御田を囲む道で神事奉仕者の行列がある時は、八乙女(やおとめ)の田舞(たまい)や替植女(かえうえめ)の田植え奉仕は行われていませんので、画に描いた状況と、実際の神事の進行状況とは時間帯が異なります。神事の様子が一枚の画でわかるように、イメージで描きました。


スケッチ制作:尾林 正利
絵のサイズ:48×54.5cm
記事の更新は、2014年12月7日

上のスケッチ原画を1200dpiの高解像度でスキャンし、業務用インクジェットプリンターで出力した額装作品を販売しています。お買上げの方は、先ず、左上にある管理人室ページをお読みなってから、購入ボタンをクッリックして下さい。



フォームに記入する作品名:住吉大社の御田植神事



住吉大社の御田植神事

左の写真3枚は、上のスケッチを描いてから13年後の平成18年(2006年)の6月14日に、大阪市と堺市を結ぶ路面電車・阪堺電軌のチンチン電車に乗って、大阪市住吉区にある住吉大社の御田(おんだ)へ行って、撮影したものです。

住吉大社の御田植神事は、古式に則った本格的なもので、昭和54年に「重要無形民俗文化財」に指定されており、毎年6月14日には、神事奉仕者が多数が参加し、賑々しく行われています。

テレビ局などの報道関係者やアマチュアカメラマンも大勢やってきますので、アマチュアには、指定された有料観覧席からの場所取りが大変です。

ここで獲れるお米は、神饌用(しんせんよう:神さまに御供えする食べ物)のお米で、合鴨農法で育てられているそうです。

左上と左中の日本髪を結った艶やかな女性の写真は、大阪市西区新町花街の芸妓 (げいこ)さんです。ぼくは京都・祇園の一流料亭での酒席に芸者接待を受けたことはありますが、大阪ではそのような経験はありません。

芸妓8名ほどが写真のようなお揃いの衣裳を着て「植女(うえめ)」となって、御田植神事の奉耕者として奉仕します。

植女が手に持っているのは、住吉大社第一本宮でお祓いの済んだ神聖な早苗です。

しかし、こうような着飾った姿では、どろんこの田圃の中に入って田植えが出来ません。

現在では専業農家の主婦たちが「替植女(かえうえめ)」になって奉仕します。

御田の舞台で植女の持った神聖な早苗を替植女に渡す「早苗授与式」が行われると、替植女たちは早苗を持って田圃に入り、田植えをします。

明治時代に「新町廓(しんまち くるわ)」で働いていた芸妓さんたちが、住吉さんに御供田(おそなえでん)を寄付したご縁で、毎年行われる御田植神事に重要な役目として参加されているそうです。

とくに、舞の上手な芸妓さんは、御稔女(みとしめ)として参加し、「神田代舞(みとしろまい」を田の神様に奉納します。

左下の写真は、替植女や男性の奉耕者が、田植えしているところです。舞台の上では楽人(がくにん)の演奏に合わせて、八乙女(8名の巫女さん)が田舞いを舞います。

カメラ:EOS 5D
レンズ:EF24-70mm f2.8L USM
撮影日:2006年6月14日


住吉大社の御田植神事の思い出

記事:尾林 正利

住吉大社は、大阪では殆どの人が知っている有名な神社で、正月にお詣りする老若男女が大変多い。しかし、住吉さんに祀られている四柱 (よんはしら) の御祭神のことについて知らない人もかなりいると思う。

神社へお詣りする時の常識として、お詣りする主祭神のこと知っておかれた方が、知らないよりは、御利益があるかも知れない。

奈良時代の養老4年(720年)に舎人親王(とねりしんのう:天武天皇の皇子)らが編纂した「日本書紀(神代から持統天皇までの皇室や豪族の系譜や出来事を漢文で記録)」によると、

3世紀の初め、仲哀天皇の皇后「神功皇后(じんぐうこうごう)」が、帝に先立たれて、住吉大神(すみよしおおみかみ)のご神託を受け、皇子を宿した身重の体で、帝に代わって兵を率いて海を渡り、朝鮮半島の新羅(しらぎ)へ進軍し、新羅と戦わずして降伏させて、三韓(新羅・百済・高句麗)に朝貢を約束させたと伝えられている。(中国の魏志倭人伝の東夷伝によると、同時期に倭の国の女王が朝貢に来たとの記述があるらしい)

遠征からの帰国後、神功皇后(長足姫尊:おきながたらしひめのみこと・日本書紀での名前で、または、息長帯比売命:おきながたらしひめのみこと・古事記)は、長旅の疲れがあった筈なのに、皇子(応神天皇)をご出産されたことから、神功皇后は「安産の守り神」として、さらに朝鮮で武功があったことから、戦時には「戦の神」、平和時には「武道の神」として尊崇されている。

住吉大社は、神功皇后と住吉三神(表筒男命:うわつつおのみこと・または、上津綿津見神:うわつ わたつみのかみ、中筒男命:なかつつおのみこと・または、中津綿津見神 : なかつ わたつみのかみ、底筒男命:そこつつおのみこと・または、底津綿津見神:そこつ わたつみのかみ)を御祭神に祀る神社で、神功皇后は、安産と武道の神、住吉三神は、綿津見神(わたつみのかみ)なので、つまり海の守り神として、造船、漁業、海運、貿易、海上保安関係者に奉賛者が多い。

住吉大社の歴史は大変古く、今から千年前の平安中期に紫式部が書いた源氏物語にも登場する。
主人公の光源氏が、義兄である朱雀帝の妃 (側室)であった朧月夜(おぼろつきよ)にちょっかいを出して、不倫の関係になった。
朧月夜は、光源氏の政敵であった、中宮の弘徽殿女御(こきでんにょご)の妹だったので、中宮はそれを知って激怒し、光は京にいづらくなり、自ら平安京から須磨へ謹慎蟄居をした時に、光源氏の一行が墨江(すみのえ)の住吉明神(現在の住吉大社)へお詣りした事が記述されている。

源氏物語は歴史上に実在しない架空の人物を多数登場させたフィクション小説であるが、光源氏は、「六条河原院」と呼ばれた「源融(みなもとのとおる)」をモデルにしているとされ、実際にあったようなことが仮名で婉曲的に書かれており、平安時代の貴族社会を知る上で貴重な古典文学作品になっている。
現在でも、風俗で働く女性名には、実名を隠して「源氏名」が利用されている。平安時代の官能小説家・紫式部は千年経った現在にも、日本文化に大きな影響を与えている。

住吉三神は「海の守護神」であったところから、西海(九州)方面へ赴任する受領(ずりょう・国司)たちも、京から西へ下る時には、必ずお詣りしたのに違いない。紫式部の父「藤原為時(ふじわらのためとき)」は、一条天皇の御代では、地方長官の受領(ずりょう・国司)に任ぜられ、淡路守(あわじのかみ)として赴任したことや、紫式部の夫も宇佐使い(大分県の宇佐神宮への勅使)だったことから、今から千年前に、紫式部が住吉大社にお詣りした可能性が極めて高い。

2014年で、大阪に生まれ育って70年、ぼくが初めて住吉さんの大鳥居をくぐって太鼓橋を渡ったのは48歳(1992年)の時で、初めて御田植神事の取材へ出掛けた時であった。大阪に48年も住みながら住吉さんに一度もお詣りしたことがないような男に、住吉さんの御利益がある筈がない。正月には伏見稲荷に参拝することが多い。

1992年、この時はパジェロに乗って住吉大社へ出掛けたが、いくら探しても住吉大社の付近には駐車場がなく、神事開始の時間が迫っていたので仕方なく住吉公園の近くの路上に愛車を停めた。神事が終わって住吉公園に帰ったら、パジェロのフェンダーミラーに黄色いワッカがぶら下がっていた。ちょうど免許更新の年で、念願のゴールド免許が貰える筈が、パーに。

住吉大社の御田植神事と言えば、ぼくにとっては、駐車違反の切符を切られた苦い体験が思い出され、それ以後は、阪堺電軌のチンチン電車を利用するように心掛けています。片道200円のチンチン電車に乗って、のんびりと住吉大社へ行くのが正しいようです。

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