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上の写真は、2007年6月14日午後1時頃に奈良県生駒郡斑鳩町(いこまぐん いかるがちょう)で撮った世界遺産の法起寺です。
使用カメラはCanon EOS 5D、レンズはEF24-70mm f2.8L USMです。
5月号のトップページ...新緑の季節、長谷寺の牡丹には、大型カメラのリンホフスーパーテヒニカV型で撮った、レンゲ畑に囲まれた長閑な佇まいの法起寺を掲載しましたが、水田に映える世界遺産の眺めも素晴らしいです。

しかし、昨今の日本に於ける田植えは、農業従事者の高齢化、少子化で農作業の後継者不足や農業の機械化で、仕事が早くて作業がラクな乗用田植機を使って1人で田植えしますので、今風の田植えが済んだあとの水田をみると、ちょっと落胆してしまいます。
というのは、昭和時代の田植えは、田圃の畦道に黒っぽい糸 (白い糸だと田の水面が空を反射して、張った糸が見づらい) を張って、苗を等間隔に手作業で植えていたので、苗が一直線に整列して美しかったのですが、昨今では乗用田植機で田植えしますので、苗の植え方がグニャグニャで、水田の苗の並び方がフォトジェニックとは言えないからです。
ぼくが高校生の頃 (1960〜1962年) は、田植え前に牛を使って、水を張った田圃の凸凹を地均しをし、田植えの日は早朝から家族親戚総動員で腰を曲げて手で田植えしていました。
当時は、どの水田も苗が等間隔に真っ直ぐ植えられていて、毎年、田植えが済んだ水田を眺めて感心していました。苗を等間隔に植えるというのは、田圃の風通しが良くなり、稲が均一に生長し易く、秋の稲刈り作業もラクになるからなんです。昨今の苗の植え方を見て、日本人の気質が変わってきたような気がします。ま、これも時代の流れなんでしょうか...。苗を等間隔に真っ直ぐに植えられるGPS搭載の乗用田植機の登場を期待したいです。


2008年6月14日夕方6時半ごろに撮影した、奈良県高市郡明日香村にある棚田の夕景です。
撮影場所は、有名な「石舞台古墳」から南南東の丘陵にある「上 (かむら)」という難読の集落付近から撮りました。上 (かむら) には、すでにアマチュアやプロの先客が30名ほどいて、畦道に三脚立てて場所取りされていました。ここの場所は明日香村の棚田夕景撮影のメッカらしく、画面左側に多武峰へ通じる県道があって、他府県ナンバーの車列が駐車していました。ぼくの隣では、名古屋市からクルマを運転して撮影に来た人もいました。
カメラは、Canon EOS 5D、レンズはEF24-70mm f/2.8L USMです。


今回のトップページは、梅雨空に似合う花・アジサイをテーマにした「アジサイ紀行」にしました。
梅雨入りの6月初旬〜中旬は、田植えが済み、奈良県や京都府、さらに鎌倉のアジサイ寺では、境内のアジサイが見頃になります。
今まで取材したのは、奈良県大和郡山市の矢田寺のアジサイ園と、京都府宇治市の三室戸寺(みむろとじ) 庭園、北鎌倉の明月院 (めいげついん)、鎌倉の長谷寺庭園、成就院 (じょうじゅいん) の境内です。アジサイのアップの写真は、京都府宇治市の三室戸寺で撮った写真を掲載しました。

カメラはCanon EOS 5D、レンズはEF24-70mm f/2.8L USMで、580EXのスピードライトを弱めに発光しています。
アジサイの花...実は、花弁 (はなびら) に見える部分が花ではありません。花を支える「萼(がく)」の部分が異常に発達したもので、アジサイの花に相当する部分は直径2ミリ〜5ミリぐらいのゴマ粒の大きさです。
殆どの人は萼の部分が美しいので、花と勘違いしています。アジサイを中性土壌で育てると、葉緑素の影響で淡い緑色の白っぽい花(萼) になるんですが、アルカリ性肥料で育てると萼の色がピンクや赤になり、酸性肥料で育てると萼の色が青になるそうで、肥料の量をコントロールして、萼の色に赤や青、紫の濃淡を付けます。


上の写真は、2007年6月14日に、奈良県大和郡山市にあるアジサイ寺・矢田寺の境内で撮影しました。撮影時に小雨が降って、傘の花も開きました。矢田寺は自然を活かした野趣溢れるアジサイ庭園でした。


上の写真は、2008年6月18日に、京都府宇治市にある三室戸寺 (みむろとじ) で撮影しました。因みに京阪電車の駅名は「みむろど」です。
ここのアジサイ庭園は広く、色取り取りのアジサイが咲いていて、見学する価値があります。三室戸寺では、夕方から庭園内をライトアップして、ナイターでアジサイを観賞できるイベントも行われています。


上の写真は、ガクアジサイです。"額アジサイ"とも書かれます。ゴマ粒のような花と、花弁のような萼(ガク)が分離しています。2011年6月15日、鎌倉市の長谷寺庭園で撮影。※鎌倉のアジサイ紀行に使ったカメラは、Canon EOS 5D Mark2、レンズはEF24-105mm f/4L IS USMです。


上の写真は、中性土壌で育ったアジサイの原型色です。淡い緑色は葉緑素の影響です。2008年6月18日、宇治市の三室戸寺庭園で撮影。


アジサイのアップ...萼の部分を赤色にするにはアルカリ性肥料を使います。萼の中心にある白いゴマ粒のような部分がアジサイの花です。アジサイの葉には「青酸配糖体」という毒素が含まれるので、食べると嘔吐や痙攣、意識不明の昏睡状態になる可能性があって、食べないように...。



アジサイのアップ...萼の部分を青色にするには酸性肥料を使います。萼の中心にある白いゴマ粒のような部分がアジサイの花です。



ここから下の写真は、2011年6月14日〜15日にかけて、北鎌倉で、円覚寺 (えんがくじ)、アジサイ寺の明月院 (めいげついん) を撮り、鎌倉では、鶴岡八幡宮、長谷寺、アジサイ寺の成就院 (じょうじゅいん) を撮りました。使用したカメラはCanon EOS 5D Mark2で、レンズは EF24-105mm f/4L IS USMです。


上は、JR横須賀線の北鎌倉駅の南東側にある、鎌倉を代表する禅寺の円覚寺 (えんがくじ) の境内です。ここは拝観料が必要です。
拝観料を払って国宝の舎利殿に向かったところ、何と座禅修行中で、入場者は拝観停止。国宝見たさに拝観料払ったのに...とても残念でしたが、遠景は撮れました。円覚寺近くの明月院は、若い女性に人気があるみたいですね。北鎌倉を散歩していると、人が多いのに静かで、植物の種類が豊かで新緑の鮮やかさに勢いがあり、日頃のストレスが癒されまました。


上の写真はJR北鎌倉駅に近いアジサイ寺の明月院 (めいげついん) です。ここのアジサイ園はブルー系のアジサイが多く、若い女性に人気があるようです。


下の写真はJR 鎌倉駅に近い鶴岡八幡宮の境内で撮影したものです。
境内を散策中、近くでガサゴソと妙な音がするので振り返ると、何と人懐っこいリス君がぼくに近づいてきました。カメラバッグを持っていたので、お菓子が欲しかったのかなぁ...。


下の写真は、江ノ電(えのでん:江ノ島電鉄) の極楽寺駅〜長谷駅間のトンネルから出た、鎌倉行きの下り電車です。
因みに、江ノ電の本社は藤沢市片瀬海岸、つまり、江ノ島駅にあって、藤沢市側が起点)になります。江ノ電は全線単線運転の路線ですが、列車交換駅でタブレットの交換を見掛けなかったですね。駅構内の分岐ポイント (転轍機) の切替が自動化されているのでしょう。日中は上り列車と下り列車とも12分間隔のダイヤですが、駅以外の同じ場所に立っていると、単線なので凡そ5分間隔で上り・下りの電車が交互に走っています。
アジサイが見頃の鎌倉は、京都の観光地のように観光客が多く、日中の江ノ電はほぼ満員状態で4両編成でした。江ノ電の一部の区間は、線路の傍にアジサイが植えられていて、「撮り鉄さん」たちの絶好の撮影ポイントになっていました。ぼくも、鉄ちゃんたちに混じり込んでパチリ!


下の写真は、江ノ電(えのでん:江ノ島電鉄) に乗車して、極楽寺駅〜長谷駅間のトンネルから出た、鎌倉行きの下り電車の運転席の後ろから前面展望の写真を撮りました。運転席から見ると、踏切に身を乗り出して撮影する鉄ちゃんにはヒヤヒヤしますね。運転士さんにはストレスが...。写真右側の人、後ろから押されて転けたら、頭が線路に...。江ノ電は運転頻度が高いので、架線や軌道のメンテナンスも良さそうですね。ところで、江ノ電の駅名で、鵠沼という駅名があり、関西人には鵠=くぐい・こう...の筈ですが、調べると、鵠沼=くげぬま;鵠は、白鳥の古名)って読めませんね。難読地名には、地図にふりがなを。



上の写真は江ノ電の極楽寺駅の南側斜面のアジサイです。タダで見られます。


下の写真は江ノ電極楽寺駅を下車して海に向かう車道を歩くと、アジサイ寺の成就院に付きます。成就院の参道は無料で行列ができていました。由比ヶ浜海水浴場 (鎌倉海浜公園) を背景に、ここはアジサイ見物もできる素晴らしいロケーションでした。開門前の早朝に行って、行列の先頭に立って開門まで待てば、参道のど真ん中から良い写真が撮れると思います。ま、近くに宿泊して早起きすることですね。


アジサイは、個人的には好きな花です。長い間、アジサイの萼 (ガク)を花弁だと誤解していましたが...やはり、ちゃんとした知識を持つことが重要でですね。これからは、アジサイのシーズン...ご参考になさってください。

梅雨入り、アジサイの季節


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記事と写真:尾林 正利 2015年5月23日編集

梅雨入り...

5月初めのGW開けに、台風6号と7号が相次いで日本本土へ接近...今年 ( 2015年 ) は、台風の発生がかなり早過ぎますね。
季節外れの、中型で猛烈な台風6号が、5月10日の夜9時に、中心気圧が 915ヘクトパスカルに発達し、フィリピンのルソン島北部を風速25m/秒 以上の暴風圏内に巻き込みましたが、早熟過ぎて勢力の衰えが早かったですね。
ネットで調べると、台風6号によるフィリピンの被害状況を詳しく伝えている日本語サイトは見掛けませんでした。

フィリピンでは、2013年11月8日に、台風30号 (HAIYAN:ハイエン:海燕) がレイテ島沖の遥か東の小島に上陸した時は、台風の規模は小型でしたが、暴風圏の雲が巨大で密集し、中心気圧が 895ヘクトパスカル、最大瞬間風速90m/秒 の猛烈な風が吹き荒び、思い起こせば2005年8月29日に米ルイジアナ州・ニューオーリンズに上陸した、最強時は902hPaで瞬間最大風速78m/秒のハリケーン・カトリーナ :Hurricane Katrina) 並の強風被害(家屋倒壊)と高潮被害(ニューオーリンズ市の80%が高潮による洪水被害)に遭ったので、普通の台風にはもう、馴れっこになってしまったのでしょうか。

中心気圧が、915ヘクトパスカル級の台風って、どんな強さなのか体験者以外には分かりません。
大阪府で平成生まれの方は、瞬間最大風速50m/秒 の「非常に強い風」や高潮の恐怖を体験していません。 非常に強い台風でも、風の音が金切り声で唸るんですよ。雨も横殴りに降って痛い。

日本の気象衛星が写した台風を見ると、台風のタマゴは赤道近くの洋上(チューク諸島※終戦までトラック諸島と記名やマーシャル諸島海域) の海水温が30℃以上の海域で発生しやすく、海水がドンドン蒸発して積雲ができ、積雲が発達して積乱雲に成長した初期は単なる熱帯低気圧 (トロピカル ストーム:熱帯の嵐) に過ぎないのですが、貿易風に乗ってグアム島の南海上を西進してフィリピンに向かう頃に"熱低"は強風圏や暴風圏を伴った台風に変身し、積乱雲 (セル) の集団が半径500km (東京〜神戸間の直線距離) ほどの渦巻状になった大型台風に発達しますと、台風の中心部 (台風の目) がハッキリとし、台風の目の中は意外と無風状態で快晴なんです。 だから、台風の目が通過する地域は、2回も同じ台風の被害に遇ってしまいます。台風の目に入ると気圧が急激に低くなりますので、海面が上昇 (盛り上がって) して、台風上陸が満潮時と重なると、波高4〜5メートルの高潮が発生するケースもあります。

1961年 (昭和36年) 9月16日午後1時過ぎ頃に、高知県室戸岬から紀伊水道を通って阪神間の尼崎付近に上陸した時の「第二室戸台風」は、大阪市では中心気圧が937ヘクトパスカルの"大型で非常に強い台風"でしたので、大阪では木造民家の屋根瓦や商店の広告看板が、風速44m/秒〜54m/秒クラスの非常に強い風に吹き飛ばされて空中に飛散し、自宅が徐々に壊されていく光景を目の当たりにしました。

第二室戸台風 (NANCY) が大阪を襲った時は、ぼくは高校2年生で、学校が臨時休校になって自宅にいました。すると、もの凄い暴風で勉強部屋のガラス窓が一気に壊れ、慌てて風下の窓を開けて、怒った風を逃がしました。机の上にあった教科書やノートは、家の外に飛んでしまい、庭の板塀は倒れました。この時は大阪湾の海面が上昇して高潮が発生し、大川( 堂島川と土佐堀川 ) が氾濫して、溢れた水が中之島一帯のビルの地下に流れて、大阪市営地下鉄の淀屋橋駅が冠水するなど大きな被害が出たんです。風台風の場合は、窓枠には板を張ってクギ留めしたほうがいいですよ。

自宅が第二室戸台風の被害に遇い、木製電柱の倒壊断線で、停電が長引いて夜はロウソクを灯し、屋根瓦が殆ど飛んで、破れた天井を見ながら晩御飯を食べた思い出が今でも脳裏に残っていて、今でも、日本に来そうな台風の動きには心配になりますね。
近年になって、大阪でも鉄筋の戸建て住宅や鉄筋の耐震マンションが増えて、C4クラスの台風やM6クラスの地震で家が倒壊する心配は少なくなりましたが、最近では台風接近で活発になる停滞前線の集中豪雨による洪水や土砂崩れの被害が甚大で、避難勧告などの注意報が出されるようになりました。

台風6号が並の低気圧になって間もなく、新たな台風7号が、鹿児島の薩南諸島付近を通過する前線を刺激した影響などで、鹿児島県の奄美地方では、まとまった雨が降って5月19日に梅雨入りしました。沖縄県よりも早いようです。

大阪市内ではだいたい、天神祭 (7月24日〜25日) の一週間ほど前に梅雨が明けるのですが、日本列島に停滞前線 (梅雨前線) が居座ると梅雨明け前に、どこかで集中豪雨(1時間に100mm前後の雨量)が必ず降りますので、市街地では、河川堤防の補強や海抜0m地区の治水対策、梅雨入りになる前に幹線道路の側溝や排水路に溜まったゴミ掃除が必要ですね。

"梅雨入り"と聞けば、ジメジメしてうっとうしいイメージを思い浮かべる人が多いと思いますが、水稲 (すいとう) の田植え作業には最も適した季節なんです。
大阪市の中心部 (北区、中央区、西区) に住んでいる市民の方々は、大阪市平野区で田植えが行われていることをご存じないかも知れませんが、ぼくが住んでいる大阪市平野区では、2015年の現在でも所々に地下水を利用した1反〜3反ほどの田圃があって、乗用田植機を使って田植えが行われています。
平野区は大阪都構想云々とはかけ離れた区域のように思います。

自宅のあるマンションの隣が一反 (300坪) ほどの田圃なので、田植え前の地均し作業と田植え作業の日は農機を使うディーゼルエンジンの音が響いてきます。
田植えを行うと、鴨が飛来してきて水田に入り、夜になると、大阪市内でもカエルの合唱が聞こえてきます。


2011年6月6日に大阪市平野区喜連東で見掛けた田植えです。大阪市内では、乗用田植機での田植えになりますが、田植機が使えない田圃の隅っこは、苗が余れば手作業で植えます。平野区では所々に田圃がありますが、宅地に地目変更される箇所も増えています。それにしても、大都会の田圃に鴨が飛んでくるなんて...。

ぼくが時々訪れていた奈良県高市郡明日香村稲渕の集落では、有料の棚田オーナー制度があって、オーナー会員に入れば6月中旬に手植えの"田植え体験"とか、9月には「案山子作りコンテスト」、10月下旬には "稲刈り体験” も出来て、喜ぶお子さんもきっといると思いますよ。

田植えの後に、蒸籠 ( せいろう:蒸し器 ) の中に洗った糯米 (もちごめ) の上に洗った小麦を入れて1時間ほど蒸し、蒸し上がると石臼に入れて杵で搗いた「半夏生(はんげしょう:奈良と大阪では、はげっしょう)」餅を食べる習慣があって、きな粉を塗して食べた思い出があるのですが、美味しいショートケーキや和菓子を食べ慣れてしまった今では...。

2008年6月15日に、奈良県葛城市新在家の道の駅「ふたかみパーク當麻」で買った、奈良県南部や大阪府南河内郡の農家で「おやつ」に食べられる、生菓子用の餅で「半夏生餅(奈良や南大阪では、はげっしょうもち) 」です。見た目はイマイチですが、昭和生まれにとっては懐かしい素朴な味がします。
餅の色はやや灰色で、搗き立ての餅の塊を葉蘭(ハラン:大阪ではバラン:寿司屋で使う葉っぱ、プラスチック製はNG) の葉っぱに包んで餅の湿気を保ち、食べる直前に葉っぱを開けて、スープ用の大きめのスプーンで半夏生餅の塊から一口大に掬って、ワラビ餅のように砂糖入りのきな粉を塗して食べます。今でも売っているかどうかは、お店に問い合わせしてください。

でも、ぼくが中学生の頃は美味しいおやつで、田植えが終った夏至の後、祖母と知り合いの方が届けて下さるのを首を長くして待っていましたね。
今の子たちの興味は、スマホのアプリやゲーム機に夢中。でも、農作業体験や、毎年年末に餅搗き体験するのは、今の子たちにも必要だと思いますね。
平野区喜連や瓜破の小学校では、「区民わた畑」での綿摘み実習や手作業の紡績を授業に採用している学校もあります。

半夏生餅は、奈良県の当麻寺近くの「道の駅:ふたかみパーク當麻(葛城市新在家402-1)」で、田植えが終った頃に、きな粉を付けた状態 (餅が乾燥しやすいので、ちょっと残念) で販売されています。
柏餅のような湿り気のある、軟らかい半夏生餅は、乾くと固くなり、不味くなるので、買ってから早く食べて下さい。餅の中に小豆の餡が入っていないので、粽(ちまき) に似た食感です。

ところで、写真家としては、6月1日は「写真の日」で、梅雨の季節も写欲が沸くシーズンなんです。
そのワケは梅雨空に咲く、オリエンタルな菖蒲 ( アヤメ・ショウブ ) 、紫陽花 ( アジサイ ) 、蓮 ( ハス ) と睡蓮(スイレン)を撮ってみたくなるからなんです。
ハスとスイレンは花の形は似ていますが、ハスは水面から1〜2メートルほど茎や葉が上方向に成長し、ハスの根はレンコンと呼んで食用になります。
睡蓮(スイレン) は、浮き草のように葉や花が水面に浮いて水面に広がって四方八方に成長していき、ハスもスイレンも梅雨明け頃が見頃になります。

この中でぼくの好きな花は「アジサイ」です。 花言葉は、"移り気"、"浮気"、"自慢家"...ぼくの性格にピッタリ当て嵌るなような...。

今回のトップページは、アジサイ寺と呼ばれる...矢田寺 (やたでら:奈良県大和郡山市) と三室戸寺 (みむろとじ※京阪電鉄宇治線の駅名は、みむろど:京都府宇治市)、さらに関東まで足を伸ばして、成就院、明月院 (じょうじゅいん、めいげついん:神奈川県鎌倉市) などで写したアジサイ紀行を今回のテーマにしました。

矢田寺へは、近鉄橿原線やJR大和路線の大和郡山駅からバスで行けますが、マイカーを利用した方が便利ですね。
というのは、アヤメ、アジサイ、ハスの花は晴天の日に見るより、小雨が降りそうな曇天で見る方が花弁 (はなびら) や萼 (ガク) の色が艶やかで、はなびら、ガク、葉に水滴がある方が風情があるからです。

マイカーがお奨めなのは、梅雨空に傘を差しながら、バス停で長々とバスを待つ...できれば避けたいところです。
ということで、矢田寺と三室戸寺へは、曇天の日にマイカーを運転して出掛けました。

宇治市の三室戸寺には、寺が運営する一般客用の駐車場と、団体客用の大型観光バス数台が停められる駐車場もありましたが、矢田寺では私設の青空駐車場が数カ所あります。
鎌倉へは、新大阪から新幹線の「ひかり」で小田原駅まで行き、小田原からJR在来線の東海道線快速で大船駅まで乗り、大船駅で横須賀線に乗換えて北鎌倉へ向かいました。

余談になりますが、首都圏の快速列車は15両編成で、基本編成10両側にダブルデッカーのグリーン車2両を連結していますが、京阪神を結ぶJR西の新快速は12両編成でグリーン車なしで、首都圏と京阪神ではJR車両に格差がありますね。
新幹線で首都圏へ行くと、旧国鉄の東海色や湘南色の車体塗装の電車がみられて懐かしいです。

JR鎌倉駅の西隣に江ノ電の鎌倉駅があって、お得な1日乗車券を買って江ノ電をフルに利用しました。江ノ電は江ノ島駅から腰越駅まで、道路併用軌道の路面電車になり、チンチン電車が4両編成で走っている光景には驚きました。
JR鎌倉駅の東〜北東側は京都市の新京極のような観光客の多い繁華街で土産物屋さんやレストランなどが犇めいています。鶴岡八幡宮参詣の帰りに、ぼくは老舗の茅木家 (かやぎや) さんで「鰻丼」を食べました。

6月の湘南海岸と言えば、シラス漁が盛んな時期なので、江ノ島近くの旅館食堂で、生のシラス丼も食べましたが、ちょっと生臭かったです。シラスは釜揚げにするか、天日に干した方が美味しいような気がしましたね...。 イワシも15〜18センチ級の一夜干しのウルメを焼いて食べるのが好きなんです。シラスの獲れない京都市左京区鞍馬本町の「京くらま林」で売っている、山椒の入ったちりめんが、個人的には一番美味しいです。

ま、どこのアジサイが一番キレイだったかは、決めつけることはできないですね。 花の好みは人それぞれですので。
でも、アジサイがカラフルで写真が撮りやすい場所というのは、やはり、アジサイ園の広い宇治の三室戸寺と鎌倉の長谷寺になるでしょう。

ところで、アジサイ(紫陽花) の原産地は日本らしく、その証拠は和歌として万葉歌人に詠まれているらしいのですが、個人的にはアジサイの知識は学校で習った記憶が無く、子供の頃は全く知りませんでした。

アジサイは、花より萼 (がく) の部分が大きく発達して、花自体は小さく地味な色で目立ちませんが、花を支えるガクの部分が大きく発達して艶やかな色が付き、日本人の殆どはアジサイのガク部分を花弁と錯覚して眺めているワケです。ぼくもそうでしたが...。

アジサイの萼 (ガク) の色は、リトマス試験紙のような化学反応をします。
ガクの色は最初から決まっていません。アジサイを中性土壌で栽培すると、咲き始めの基本色は淡い緑掛かった白色ですが、中性土壌にアルカリ性肥料を施肥して育てれば、ガクの色はレッド系に発色し、酸性肥料を施肥して育てると、ガクはブルー系に発色するそうです。

つまり、アジサイが咲き出す頃は、ガクが未発達なので、葉緑素の影響でガクの色は淡いグリーンのままですが、やがてガクが成長すると、肥料の量の影響で色の濃淡がついて、ピンクや赤紫色、または藍色や青色になります。同じ株でもガクの色が異なるのは、根から送られてくる肥料の量に差が付くからのようです。

アジサイの葉には、毒性成分(青酸配糖体) が含有されているらしく、唾液や胃液などの消化酵素と反応して体内で青酸が生成されるらしいのです。だから、人間や家畜(とくに牛馬) が食べると、嘔吐や痙攣、昏睡症状を起こすこともあるそうです。

2008年6月に、茨城県内のレストラン経営者が自店の庭に生えていたアジサイの葉を食用の紫蘇の葉のように料理の下に敷いて出したところ、お客さんがアジサイの葉を食べて食中毒の症状が出たそうです。
19名の客に料理を出し、アジサイの葉も食べた8名が嘔吐や眩暈を発症...。医療処置が早かったので無事でした。

青酸配糖体という毒の成分は、未成熟の梅とか杏、未成熟のリンゴにも含まれているらしく、ご注意を...。梅干しとか梅酒とかは、数ヶ月かけて熟成させてから、食べたり飲んだりするのは、毒抜きも兼ねているんでしょうね。

女優でタレントの小池栄子さんが「お伝」役で出演したフジテレビの大奥のドラマ(2005年10月オンエアーの"華の乱") で、将軍・徳川綱吉の側室「お伝」が、ライバル側室の世継ぎ(幼児)を病死させるため、こっそり青梅を食べさせようと陰謀を企むシーンがあって、お伝の袂から青梅が数個、大奥殿舎の畳に転がるシーンが印象的でした。江戸時代には、身近な植物に危険な毒性があることが判っていたのでしょう。
幼児が床に転がった青梅を口にしても、実が固くて不味く、吐き出す可能性は高いですが、うっかり誤飲したときは大変ですよ。梅酒を自分で漬けるときは、スーパーで買ってきた青梅を幼いお子さんの手の届かない場所に保管して下さい。

写真と記事:2015年5月23日 尾林 正利

写真と記事の無断転載を禁じます。尾林 正利

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