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恐怖の報酬

スリルとサスペンス映画を得意にする、アンリ・ジョルジュ・クルーゾーの傑作。1952年に公開(日本では1954年に公開)

LE SALAIRE DE LA PEUR
un film de Henri-Georges Clouzot


          

主なキャスト

Mario(マリオ:フランス領コルシカ島出身で無職の流れ者)・・・Yves Montand(イヴ・モンタン)
Jo(ジョー:パリ出身で無職の流れ者)・・・Charles Vanel(シャルル・ヴァネル)
Luigi(ルイジ:地元の働き者で、普段は土木作業員)・・・Folco Lulli(フォルコ・ルリ)
Bimba(ビンバ:ドイツからの流れ者で、居酒屋に雇われた白タク運転手)・・・Peter Van Eyck(ペーター・フォン・アイク)
Bill O'Brien(オブライエン:サザン オイル カンパニーの支社長)・・・WilliamTubbs(ウィリアム・タップス)
Linda(リンダ:居酒屋のウェイトレスでマリオの恋人)・・・Vera Clouzot(ヴェラ・クルーゾ)

主なスタッフ

監督:Henri-Georges Clouzot(アンリ=ジョルジュ・クルーゾ)
脚本・Henri-Georges Clouzot(アンリ=ジョルジュ・クルーゾ)
台詞:Jerome Geronimi (ジェローム・ジェロミニ)
原作:Georges Arnaud(ジョルジュ・アルノー)
撮影:Armand Thirard(アルマン・ティラール)
音楽:Georges Auric(ジョルジュ・オーリック)
美術:Rene Renoux (ルネ・ルヌー)
編集:Henri Rust-Madeleine Gug(アンリ・ルストとマドレーヌ・ギュ)
製作:Raymond Borderie(レイモン・ボルデリエ)
製作会社: C.I.C.C.-FILMSONOR,VERA FILM-FONO ROMA
配給会社:東和
製作:1952年、公開:日本では1954年
上映時間:149分
画面サイズとカラー:スタンダード(4:3)・白黒作品
録音:DVDはドルビーサウンド

トッポの感想

映画の題名通り、殆どの人が尻込みするようなハイリスク(超危険)な仕事を請け負う者には、それなりにハイリターンな報酬が得られるものである。
そういう仕事は常にあるものでなく、緊急を要するものだ。
仕事がなく、文無しになり、目先の金(かね)に飢えた男たちは一攫千金を狙って、覚悟して危険な仕事に挑む。事故が起きて死傷した場合は、何の補償もない。

それを承知の上で、一つ間違えば、命を落としかねない仕事に挑んだ男たちを描いたジョルジュ・アルノーのサスペンス小説「恐怖の報酬」が、1949年に出版され、3年後の1952年には、フランスの映画作家、アンリ=ジョルジュ・クルーゾによって同名のタイトルで映画化された。

映画の「恐怖の報酬」は、南米のカリブ海に面した産油国のベネズエラを舞台にしており、僻地の油井火災の消火に、ダイナマイトの原料である、「ニトログリセリン液」という危険物を緊急輸送するトラック運転手の過酷な労働を描いたものである。
因みに日本では、液体になったニトログリセリンのトラック輸送は法令で禁止されている。

この映画はフィクションなので、国名や地名が伏せられているが、画面と台詞に場所のヒントが隠されている。例えば、旅行店のウィンドウや道路標識に「CARACAS:スペイン語」と書いてあるし、台詞でも「カラカス」とか「橋を渡る」と話しているシーンがある。橋とは、マラカイボ湖を渡る橋のことだろう。(映画では小さな橋だったが)
映画のイントロに登場する、母国へ帰れない事情のある流れ者たちの掃き溜まり場所と言われる「ラス・ピエドラス」という地名は、中南米各国に多い地名で、ベネズエラ(Veneziera なので発音は、ヴェネズェラ)のスリア州マラカイボ市から南西50kmのところにもラス・ピエドラスという場所が現存する。

マラカイボ市は、1918年からマラカイボ湖の湖岸と湖底から採掘される原油の輸出で栄えている都市で、油井火災の消火作業という、1952年に製作された映画のテーマと合致する。
マラカイボ湖は、内陸の湖だが、運河でカリブ海と繋がっており、原油タンカーが石油リグ(石油プラットホーム)に直接接岸するところで、マラカイボ市には港もあって、港には貨物船の入出港時に荷役の仕事が必ずあるので、出稼ぎ労働者も集まってくる。

この映画では、油井火災の消火にラス・ピエドラスにある、架空の石油会社「サザン・オイル・カンパニー(SOC)」から600ガロン(約2400リットル)の「ニトログリセリン液」を2台の大型トラックで輸送するストーリーだが、ラス・ピエドラスから約500km東に「エルフリアル油田」が現存し、これも、映画の設定とほぼ一致するが、エルフリアルに原油の埋蔵が発見されたのが1986年である。
この映画の原作が1949年に執筆されたので、原作者のジョルジュ・アルノーは、エルフリアルから原油が採掘されることを37年も前に予知していたということになる。

この映画を観たのは、何時だったのかは憶えていないが、三十代の頃にテレビ放送で観た。日本語吹き替えだったと思う。
これと、同様な映画(油井の消火活動をテーマにした作品)は、5年後の1957年に、コーネル・ワイルドが監督・出演した「マラカイボ」が、アメリカのパラマウント映画で製作された。ぼくは理髪店に置いてあった映画雑誌の裏表紙の広告で知ったが、一度、観ておきたい作品である。

さらに、1978年に、ウィリアム・フリードキン監督が、「ジョーズ」に出演しているロイ・シャイダーを主演にして「恐怖の報酬」のリメイク版を製作している。こっちの作品は、ドミニカ共和国の森林を開拓して、ダミーの油井や原油採掘施設を建設してロケされたようだ。

ところで、「恐怖の報酬」の監督は、フランス人のアンリ=ジョルジュ・クルーゾである。
ぼくが観た、他のクルーゾ作品に「「犯罪河岸(1947年・白黒作品)」、「情婦マノン(1948年・白黒作品)」、「悪魔のような女たち(1955年・白黒作品)」、があって、いずれもハイレベルな演出で、ドキッとするシーンの撮影が上手いアルマン・ティラールと組んで、コクのある面白い映画を製作している。ぼくの好きな映画作家の一人である。

「恐怖の報酬」では、主役のトラック運転手のマリオ役にシャンソン歌手のイヴ・モンタンが起用され、当作品では汗まみれ泥まみれになって、好演している。
イヴ・モンタンは、イタリア生まれだが、幼い頃、父親が共産主義者だったので、共産主義を排除するファシスタ党(黒シャツ党)が台頭してきたイタリアでは暮らし難くなり、フランスのマルセイユ市へ家族と共に移住した。

渡仏したイヴは、やがて歌手を志し、国内のミュージック・ホールで歌っているところを大歌手のエディット・ピアフに見出され、彼女のお陰でフランスを代表するイケメンのシャンソン歌手になり、1944年の「パリ開放」の時は、エディット・ピアフと一緒に、ムーラン・ルージュの舞台に立ち、大入り満員の観客から万雷の拍手を浴びた。1946年に映画俳優兼歌手として映画「夜の門」に出演して、主題歌の「枯葉」を歌い、これが大ヒット曲になった。

パリ市内はイチョウ並木が多く、12月に黄色く染まったイチョウの葉が、晩秋の木枯らしに吹かれて寒空に舞っている・・・セルフ(チップ不要のセルフサービス)の店で買った、カラシの利いた熱々のでかいホットドッグ(安くて美味しい)を頬張りながら、イチョウ並木を歩く・・・パリという街は、シャンソンの「枯葉」が似合うのだ。

イヴ・モンタンが出演する映画で最初に観たのは、1957年に製作された「青い大きな海(カラー作品)」である。
ダイナマイトを海中で爆発させて、気絶して海面に浮かんだ魚を網で掬う違法な漁業をする漁師役で出演していて、学生の頃、映画館で観た記憶がある。

1961年製作のハリウッド映画で、アナトール・リトヴァクが監督した「さよならをもう一度」では、大女優のイングリッド・バーグマンと共演して、女性に優柔不断な中年のプレイボーイ役を好演していた。因みにモンタンの奥さんは、「嘆きのテレーズ」に主演した女優のシモーヌ・シニョレである。

1966年に製作された、ジョン・フランケンハイマーが監督した「グランプリ」では、F-1ドライバー役として出演しており、イヴ・モンタンは、車を運転する映画に縁が深いのだ。
彼が出ている映画を4本観たが、自慢のシャンソンは聴けなかった。

         
          

          

映画には関係の無い無駄話だが、この作品は、南米の石油大国・ヴェネズエラを想定したスリルとサスペンス映画である。南米の国民性も描かれている。日本人でヴェネズエラに詳しい人は少ない。社会主義者のチャベス政権になってから反米国家になったので、親米時代に買ったアメリカのF-16戦闘機とロシアのスホーイSu-30戦闘機を配備しているユニークな国だ。

ヴェネズエラは美人が多い国として有名で、女子刑務所内でも女囚のミスコンが行われ、世界No1のミスコンテストでは、お隣のコロムビアと一位二位を争っている。日本と馴染みの薄い国だが、日本のプロ野球で活躍した、ロベルト・ペタジーニ(埼玉西武ライオンズ)、アレックス・カブレラ(福岡ソフトバンク ホークス)、アレックス・ラミレス(東京ヤクルト スワローズ)選手の出身国だ。

この映画は、今から50年前の南米を描いた作品なので、今の様子とは違うと思うが、飛行場に駐機してあったセスナ機が盗まれる事件があったそうで、首都カラカスでは白タクでの誘拐事件が多発しており、治安は良くないらしい。オリノコ川上流のジャングルの水辺には、凶暴なオオアナコンダが棲んでいて、人が襲われる。

         

さて、映画の話・・・凸凹道でのニトログリセリンの運搬は、振動に敏感な爆薬なので、一つ間違えば、命を落とす危険なミッションなので、一人2000ドルの報酬(着払い)だ。
大きい方のトラックには、400ガロン(約1600リットル)、小さい方のトラックには、200ガロン(800リットル)のニトログリセリン液を積んで、石油会社の倉庫から約500キロ離れた油井火災の現場に運ぶトラック運転手を請け負ったマリオたちが、真夜中の3時に石油会社の工場から出発する。
アルマン・ティラールが撮影する、観客がハラハラドキドキさせるシーンが三回もあって、結末も見所である。

          

          
          
          
          
          
          

           
          

ニトロを運ぶ2台のトラックには、4人の運転手(二交代)が採用された。ニトログリセリンに大きな震動を与えると、爆発するので、運転は慎重にしなければならないが、道中には様々な「難関」が待ち受けていて、手に汗を握る。
上の写真はスイッチバックのヘヤピンカーブで、腐った木製の吊り棚で、方向転換するトラックが苦戦しているシーンだ。

         

ストーリー

          

熱帯の南米産油国(ヴェネズエラ)にあるラス・ピエドラスという町の酒場の前。ここは、スペイン語が公用語の国だ。
因みにVenezuelaは、この土地を発見したイタリア・フィレンツェの探検家アメリゴ・ヴェスプッチが上陸した場所の近くに水上の村落があって、イタリアのVenezia(ヴェネツィア)に似ていたので、Venezuola(ヴェネズオラ)と名付け,それが、いつの間にかヴェネズエラに訛ったものとされている。

うだるような乾期の暑さ。仕事にあぶれた文無したちは、暇つぶしの涼と、誰かが振る舞うタダ酒を当てにして、酒場のテラスに集まってくる。
貧民も多くて、インディオ(原住民)の子供たちは日よけの帽子は被っているが、男の子はパンツを穿いておらず、捕まえたゴキブリをオモチャにして遊んでいる。 こういう描写は、クルーゾ監督の独特の世界だ。

この町には、様々な理由(わけ)があって、母国に帰れない食い詰めた流れ者たちの掃き溜めになっている。
コルシカ島(Corsica:コルシカ語でフランス語ではCorse:コルス)出身のマリオ(イヴ・モンタン)も、この町に流れ着いた一人だ。
流れ者でも、イケメンのマリオには、酒場の看板娘リンダ(ヴェラ・クルーゾ:監督の妻が出演)という色っぽい恋人がいる。

ラス・ピエドラスには外資のカナダ系の石油会社「サザン・オイル・カンパニー(SOC社:小説上の架空の会社)」があるので、町内に小さな飛行場があり、国際線の双発プロペラ機も離発着している。
乗客はタラップを降りて入管手続きを行うが、ここでは乗客が少ないので、横柄な係員が一人で入管・出国業務をやっている。パスポートに10ドル札を挟んで置けば、スタンプがバンバンと押され、手続きはスムーズに行く。

ヴェネズエラでの石油会社の雇用を当てにして、ラス・ピエドラスに流れて来た。
「油井の有る所には、必ずアメリカ(資本)の石油会社がある」という台詞があり、これはクルーゾ監督の私見だろう。

「仕事が無いなんて、俺も落ちこぼれたもんだ」と毎日、酒で気を紛らせていた時に、ある日、失業者にとっては朗報が飛び込んできた。SOC社の街宣車が求人を募っている。
「トラックの運転手、報酬は現金払い。SOCからの募集です!」

ラス・ピエドラスのSOC社から約500km離れた、その会社が所有する油井に火災が発生して作業員が13名も死亡した。
SOC社の支社長のオブライエンは会議室に技術者を集め、油井消火の方法を議論した。

SOCの幹部:「あれだけの火を消すにはかなりの爆薬が要る」。
オブライエン:「木などの邪魔になるものは排除して、爆風で火事を消せる状態にする。」
SOCの幹部:「うちの倉庫には、ニトロが200ガロン(約800リットル)しかないが。」
オブライエン:「その、3倍は要る。至急、掻き集めなければ」。
SOCの幹部:「用意するのはいいが、危険物運搬専用の車両は?」
オブライエン:「そんなの、用意する時間がない。とにかく、それを運ぶには、大型トラックが2台要る」。
SOCの幹部:「それで、運ぶのか?」。
オブライエン:「できるだけ、衝撃を与えず運搬する」。
SOCの幹部:「この国の道路状況なら、ニトロと一緒にお陀仏だ」。
オブライエン:「心配するな」。
SOCの幹部:「日雇いを使うのか?」
オブライエン:「わが社が求人募集すれば、奴らは必ずここへ来る」。
SOCの幹部:「危ないと分かっているのに?」
オブライエン:「その通り、それしか方法がない。家族もいない流れ者の奴らだ。とやかく言う遺族もいない」。

その結果、600ガロンのニトログリセリンを使って、油井近くに発破を仕掛け、強烈な爆風で油井の炎を消すことが、会議で決まり、600ガロンのニトログリセリン液を2台のトラックで400ガロン(1600リットル)と200ガロン(800リットル)に分けて運ぶ運転手4名が急募されることになった。

トラックに積んだニトログリセリンを無事に油井火災の現場に届けられたら、成功報酬として一人当たり2000ドルの現金が支払われることになった。
但し、ニトログリセリン液は、僅かなショックで爆発する危険物なので、とくに山岳地帯の未舗装道路での運転には慎重さが求められる。

オブライエン支社長の直々の募集には、多くの応募者が手を挙げたが、オブライエンが選んだのは、マリオ、ビンバ、ルイジ、スメルロフだった。
マリオに親しくなったジョーは選考に漏れて不服だった。 出発時間の早朝3時にマリオ、ビンバ、ルイジが出勤してきたが、社長が採用を決めたスメルロフはやって来ず、代わりにジョーがやってきて、マリオのトラックに乗り込み、先発する。
なぜ、スメルロフの代わりにジョーがやってきたのか、今回の運転手募集は緊急を要するミッションなので、そんなことを詮索するような時間は無かった。

マリオの恋人リンダは、マリオがニトログリセリンを運搬するトラックの運転手になったことを知って、トラックを停めに行くが、マリオの決心は固く、マリオとジョーの二人組のトラックは、リンダを道端に残して真夜中の暗闇に吸い込まれて行く。
次発のビンバとルイジの二人組も、30分遅れて先発の後を追う。
トラックの運転席の前方に「Caracas」の道路標識が見える。

ところが、スメルロフの代わりに強引にやってきたジョーは、意外に「ヘタレ(腰抜け)」な男で、安全運転だと言って、30km/h以上にスピードを上げず、アクセルを強く踏む勇気がないのでノロノロ運転。火災の現場では、消火作業員等が、彼らの到着を首を長くして待っているので、先を急ぐナビゲーターのマリオの指示に従わない。
おまけに腹が減ったとか、悪寒がするとか言って、運転を拒み、停車したところを30分遅れで出発した、ビンバとルイジの二人組のトラックに追い抜かれてしまう有様だ。

マリオは、堪忍袋の緒が切れて、ジョーを助手席に座らせ、自分がトラックを運転する。
夜が明け、トラックは山岳地帯に入り、道幅の狭い急勾配の坂を登って行く。やがて進行方向がスイッチバックに切り替わるヘアピン・カーブの難所があり、トラックの後部を吊り棚に乗せて方向転換しなければならない。

マリオとジョーの先発トラックを途中で追い抜いたビンバとルイジの二人組のトラックは、スイッチバックの難所で吊り棚の敷き板を後輪で壊したので、マリオとジョーの二人組のトラックは、吊り棚の破損箇所を避けてバックしなければならない。
ジョーは降りて、吊り棚の敷き板の状態をナイフで突き刺して点検をすると、棚板は腐っていて、ビンバとルイジの二人組のトラックより800kgも重いトラックを載せると危ないことが分かり、マリオに、一緒に逃げようと言うが、今度はマリオが反発。
「ここまで来た以上は、2000ドルを貰うまで、俺は諦めない」。

マリオは強引にトラックを吊り棚に載せ、ジョーのストップの声を無視して、トラックをバックし過ぎたため、後ろにいたジョーは吊り棚から振り落とされた。
吊り棚から落とされたジョーは近くに落ちて助かった。
「もう、アカン」と思った,ヘタレのジョーは怖じ気づき、崖から這い上がって、仕事を放棄してしまい、トラックから離れて傍観する。

マリオは、トラックを吊り棚に載せた時、端に寄せすぎた為、トラック荷台のフックに吊り棚のワイヤーが引っ掛かり、マリオが気付かずトラックを前進させると、吊り棚のワイヤーでトラックの後輪が激しく左右に振られてスリップする。マリオはトラックから降りて、後輪の前に木の枝を束ねてスリップ止めを施し、慎重にアクセルを踏んで吊り棚から離れた瞬間に、ワイヤーが外れて吊り棚は崩壊し、谷底に落ちていく。

この映画では、はらはらドキドキのシーンが3回あるが、吊り棚の崩壊は、その1回目である。
マリオは道路にへたり込んでいるジョーを見つけ、トラックに乗せて出発する。ここで、不安が一つ、帰りはどうするの?

ビンバとルイジの二人組は、快調に進んでいたが、山道に大きな岩が行く手を阻んでいた。冷静沈着なビンバは、大きな岩を積荷のニトログリセリンを少し使って爆破する方法を考え、積荷を爆破のショックから遠ざける為に、トラックを遠くにバックさせる。

マリオとジョーの二人組のトラックは、彼らに追い着いて、ビンバの発破作業を見守る。導火線に火が点いて、ビンバが逃げて来ると巨岩は木端微塵に破壊され、行く手を阻むものが消えて、二台のトラックは、間隔を開けて出発する。はらはらドキドキのシーンの2回目だ。
しかし、マリオとジョーの二人組は、前方で大きな破裂音と煙が立ち上るのが見え、ビンバとルイジの二人組のトラックが事故したことが分かる。
ジョーは、二人の死に、すっかりやる気を無くして怖じ気づいたので、「お前は何しに来た?」と、マリオに詰(なじ)られる。

やがて、彼らの事故現場に差し掛かると、ビンバとルイジの二人組のトラックは跡形もなく消えており、送油管が壊れて凹んだ道に原油が溜まっていた。
油が溜まるとスリップするので前に進めない。
ジョーは、油溜まりに入って、障害物の木の枝を取り除きながら、マリオが運転するトラックを誘導させる、はらはらドキドキのシーンの3回目だ。

しかし、どんくさいジョーは、油溜まりに足を取られて、前進するトラックのタイヤに轢かれてしまう。泥濘み道は、ローギヤで一定速度で走らないと、駆動輪のタイヤがスリップして、泥の中でスタック(立ち往生)してしまうので、停止できないのだ。
全身油まみれのジョーは、激痛に耐えながら、油溜まりから、力を振り絞って這い出す。

マリオは油溜まりからトラックを引き上げるため、乾いた道に鋼鉄のアンカーを二本打ち付け、二本のアンカーとトラックの両後輪の車軸をワイヤーで結んで、泥濘(ぬかる)みのスタックからトラックを脱出させる。
こういうシーンを見ると、車はやっぱりウィンチ付きのジープが一番、車高の高い四輪駆動車の有り難さが身に沁みる。

          
          

          
          
          
          
          
          

           
          

ニトロを運ぶ2台のトラックの内、一台は途中で爆発した。この爆発で油送管が破裂し、道路に油溜まりが出来た。マリオの相棒になったジョーは、ぬかるみに入って、倒れた木を除去したが、滑って転倒し泥まみれに・・・。

やっと、難関をクリヤーしたマリオは、目的地に近づいてホッとするが、相方の足を轢いたことで素直に喜べない。
骨折したジョーの足は水で洗ったものの、消毒しなかったので、時間が経つに連れて腫れた患部から腐り始め、ジョーは激痛で体力が奪われ、目的地に到着したときは、息が切れていた。

         

ジョーは、へとへとになって、油井の火災現場に到着した。
ニトロ運搬の重責から解放されて、仕事が成功した安堵感で睡魔に襲われて地面に倒れ、現場の作業員に担がれて宿舎のベッドに連れて行かれる。

翌朝、マリオは起きると、油井から炎が消えていた。
所長は、約束の4000ドルをマリオに渡し、 「よくやってくれた。トラックの点検は済ませてある。ウチから運転手を一人付ける(ラス・ピエドラスの本社まで送らせる)が・・・どうだね?」
マリオ:「いいえ、一人で大丈夫です」。
リンダが働く居酒屋では、マリオの無事が伝えられ、リンダは大喜び。早速ダンスが始まり、ワルツを踊り出す。

帰り道を運転するマリオは、ルンルン気分。
頭の中は、大金の4000ドルの使い道と、リンダに逢って、愛を確かめ合うことで、こちらも心が踊っている。
人は運転中に、運転以外のことに気を取られ過ぎると、目の前の注意力が散漫になって交通事故を起こす確率が極めて高くなる。
大金を手にしたマリオは恋人のもとへ、一刻も早く帰りたいので、次第に運転が粗くなって、徐行しなければならない狭い山道を飛ばしに飛ばす・・・。

しかし、突然、路肩が崩れた例の吊り棚のヘヤピンカーブに差し掛かった時、マリオは一瞬、SOC社の面接を受ける時に、このミッションは、「行きはよいよい、帰りは怖い」だと、言っていたことを思い出して、ハッと我に返ったが、時既に遅し、トラックは崖を突き抜け谷底へ転落していった・・・。

2012年6月20日 尾林 正利

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